積み上げてゆくこと。

多くの政治家は、一番最初はたった1人で駅前や街角に立ち、誰も聞いていなくても演説を始める。 作家や評論家だって、一冊一冊、自分で自分の本を売る“手売り”から始める人もいる。 綾小路きみまろだって、自分の漫談を吹き込んだテープを持って高速道路のパ…

「欲望の枯渇」問題。

「ほしいものが、ほしいわ。」 糸井重里氏の名コピーである。 「欲望の枯渇」。 ここ数年のテーマだ。 加齢に伴い(現実を直視するのは大事だ)、欲しいものは無くなり、やりたいことも無くなった。食べたいものも飲みたいものも無くなり、ただただスマホの…

花見の意味。

今年になってようやく花見の意味がわかった。何十年も、「花など眺めて何になる。どうせ皆花など見てはいない」と思ってきた。 コロナ禍と加齢を経て唐突に花見の意味がわかった。あれは「桜浴(さくらよく)」「生命浴(せいめいよく)」なのだ。 暗くて寒…

SNSは承認欲求を肥大させ、そして同時に承認欲求をやせ細らせる。

SNSは承認欲求を肥大させ、そして同時に承認欲求をやせ細らせる。 SNSが承認欲求を肥大化させる問題は、しばしば指摘されてきた。 SNSでの承認が欲しいばかりに人はバイト先でアイスケースに横たわって写真をアップしたり飲食店での問題行動を動画に上げたり…

『納税Pay導入』のエイプリールフールネタに思う。

早朝から大炎上している例のサイトを見てきた。 「納税Pay導入のお知らせ」という歳入省のエイプリル・フールネタのことだ。 確かにあれはやり過ぎだと思う。 炎上でサーバーが落ちたりしてるといけないので簡単に説明する。 歳入省のサイトに飛ぶといきなり…

謎言葉。

よくよく考えるとよくわからなくなってる言葉というのがある。 「写真はイメージです」という注意書きとか。 今日も施設を退所した患者さんのカルテに「ホームから帰宅」「今後ショートステイをロングで利用。ロング・ショート」と書きながら、「オレはいっ…

通訳と医者は似ている。

通訳と医者は似ている。 とめどなく与えられる日常言語ベースの情報の山から本質的な情報をピックアップし、他国語や医学用語に変換する。 ギリシア語で通訳は「hermenuties」というそうで、これは神々と人間との交信、いわば神々言語と人間言語の通訳を担っ…

通勤電車。

『通勤電車で座るための戦略とアクションプラン』みたいな宣伝広告を興味深く読んでいたら最終結論に「もっとも大事なのは一日でも早く通勤電車に乗らなくて済むような生活を手に入れること。そのためにも、資産運用は当銀行にお任せください」って書いてな…

プロの賭け事師の心境はいかに。

賭け事のことはコンチネンタルの単チェリーくらいしか知らないが(ミリオンゴッドまで行けなかった)、プロのギャンブラーみたいな人の心境には興味がある。 我々素人からすると、森巣博氏の書くような「鯨」級のハイ・ローラーというのは強運の持ち主で酒も…

「コスパが悪いから社内の飲み会には行かない」という言説に思う。

付き合い酒・接待酒ほどマズいものはない。 だが一方で、“営業”無しに仕事を得られる人は少ない。 「コスパが悪いから会社の飲み会いくな」という話がXa.k.a.Twitterで話題だ。 気持ちはわかるが、これは行き過ぎると「会社を辞めてブログで稼ごう」的な、若…

「ふるさと納税」とインバウンド政策が首長にもたらすポジティブな心理効果について。

ふるさと納税やインバウンド政策について考えた。万物と同じく功罪両方あるだろうが、プラスの面、特に心理的なプラスの面についてだ。 山口県柳井市の元市長の河内山哲朗氏がこんなことを述べている。 〈日本の地方行政は(場合によっては国政もそうですが…

「カタ」と自由意志。

2023年8月6日放送の『桂文珍の演芸図鑑』で狂言師の野村萬斎氏が面白いことを言っていた。うろ覚えなので間違えていたら直します。 「以前から全国の学校で教室をやっております。 きっかけですか? …ひところ、学校で『キレる』子どもというのが話題になり…

【覚書】マンガ編集者の話。

覚え書き。 マンガ編集者の話。 たぶん1980年代後半、朝日新聞夕刊の文化欄の論評でこんなことが書いてあった(と思う)。 日本のマンガは子ども向けだけではなく文学や政治経済、思想、文化などありとあらゆるテーマを幅広く扱うようになった。その背景の一…

鳥山明先生の訃報に思う。

景山民夫氏のエッセイに『アディオス・パンテラ・ロッソ』という作品がある(『普通の生活』角川文庫収載)。 景山氏がテレビの撮影か何かでスペインの田舎村に滞在している。 小さな村ではやることもなく、言葉も通じない。 村のレストランに入る。同じくや…

NASAで教えるのはリーダーシップではなくフォロワーシップ、というお話と先輩後輩システム。

(Twitterに上げたものを備忘録としてアーカイブ化しときます) ・「NASAではどんなリーダーシッププログラムをやってるんですか」と宇宙飛行士の人に質問したら、「リーダーシップはあんまり教えないですね。むしろフォロワーシッププログラム。宇宙飛行士…

『流暢性の錯覚(幻想)』と『望ましい困難』 

結論は「自動翻訳でもなんでも便利に使ってじゃんじゃん情報を浴びるべきやろ」なんですが、「個人的に」医学論文は原文のまま読んだほうがよいと思うところがある。その理由をずっと考えていた。 あくまで個人的な感情論で、他人に押し付けるつもりはまった…

「定年延長の流れでぼくら歴史学やってる者が危惧していることがあって」 ある時、近現代史学者のK先生が言った。

「定年延長の流れでぼくら歴史学やってる者が危惧していることがあって」 ある時、近現代史学者のK先生が言った。 「それは郷土史家がいなくなることなんですね。 今までは、いろんな地方で仕事を引退した公務員のかたとか地域の人とかアマチュアの歴史家が…

サンクコストと即断即決。

とある往診サービスが撤退を発表した。診療報酬が下げられると判明した途端の、即断即決である。 道義的にどうかと思うが、純粋に経営的な視点だけからみれば、儲からなそうな分野から撤退するというのは仕方のないことかもしれない。 邪推だが、こうした即…

「友だちはそんなに必要ないけれど、仲間はそこそこいたほうがよい」 という話。

「友だちはそんなに必要ないけれど、仲間はそこそこいたほうがよい」 そんな話を、吉本ばなな氏の『吉本ばななが友だちの悩みについて答える』(2021年 朝日文庫 p.22)で読んだ(もとは雀鬼・桜井章一氏の言葉らしい。原著をご存知のかたは教えてください)…

雀鬼いわく、「いい手はつくるのではなく生まれる」。

〈「つくる」のではなく、「生む」という感覚を持つ〉 雀鬼・桜井章一氏の言葉だ。 〈麻雀は「いい手」をつくろうと頑張るほど、うまくいかなくなるものだ。私が勝負に際して常に大切にしているものは、「つくろう」とするのではなく「生む」感覚だ。〉 (『…

SNSのコツは「ポジティブなことはピンポイントで、ネガティブなことはふわっと書く」

警官とさよならを言う方法はまだ発明されていないしSNSとうまく付き合う方法もまだ人類は見つけていないが、もしかしたら「ポジティブなことはピンポイントで、ネガティブなことはふわっと」書くのがコツなのではと思い始めた。 「生きとし生けるもの全てに…

原作と実写の幸せな出会いと別れ~『納棺夫日記』と『おくりびと』

「富山のね、指定されたお店に少し遅れて行ってね、お店の人に案内された部屋のふすまを開けたら、畳の上にスッと背筋を伸ばした青年が正座していた。 青年は深々とお辞儀をすると『先生、お忙しい中おいでいただきまして、ありがとうございます』と言った。…

「すぐ役に立つ本はすぐ役に立たなくなる本」であり「すぐ役に立つ人間はすぐ役に立たなくなる人間」だというお話。

「すぐ役に立つ本はすぐ役に立たなくなる本」であり、「すぐ役に立つ人間はすぐ役に立たなくなる人間」だ、という(小泉信三『読書論』岩波新書kindle版 第一章。後者の言葉は工学博士谷村豊太郎氏のものとのこと)。 なんでもかんでも「すぐ役立つ知識」「…

男前で有名なKさんが語ってくれた話。

「女の子にね、『お前の付き合ってる男はサイテーだから俺と付き合え』って言って付き合ってもらえるか?肘鉄くらって、『確かにわたしの付き合ってる男は上等ではないかもしれないけど、わたしの勝手じゃない。そんなことあんたに言われる筋合いじゃないわ…

ネットの狂気とシュクメルリ。

純度の高いヤツは危険だ。 普通の人間は、純度の高いヤツとずっと付き合えるほど強くはないのだろう。 インターネット文化黎明期には、かなりの感動があった。 匿名や仮名にハンドルネーム、実生活での年齢や性別や肩書きや社会的役割から解き放たれ、ネット…

「人間は一生のうちに7~8回家電を買い替える」というお話。

「人間はね、一生の間に7〜8回、家電を買い替えます。前半の3〜4回は安売り量販店で買うかもしれない。我々のお客様は、後半の4回の買い替えの方々です」 昔、いわゆる“街の電器屋さん”で働かせてもらったことがある(本当)。冒頭のセリフは、そのレクチャ…

「無責任なアドバイス」の話。

〈無責任なアドバイスこそ聞くに値する〉 (by 東京都・自営業 61才男性。『他人が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え』鉄人文庫 p40) 最近の人はみんないい人だから(大雑把)、無責任なアドバイスというのはしない傾向にある(当社調べ)。 相手をおも…

なぜTwitterでのやりとりではイラっとすることがあるのか考ー議論と会話、7並べとUNO

ネットでのコミュニケーションをこよなく愛する令和男子だが、ごくたまに、1ppmくらいの確率でイラっとすることがある。あまりにも文意からズレたコメントをもらった時だ。ちなみにppmはparts per millionの略で、「100万分の1」のことである。おととい水道…

雪の降る町の夜に。

〈♪だからキライだよ こんな日に出かけるの〉 キライでもなんでも、とにかく出かけねばならない。仕事だからだ。 だいたいからしてクリスマスとか大晦日とかお正月というのは若手の医者が当直すると相場が決まっていて、クリスマスとか大晦日とか元旦くらい…

大きめのボウルにバターをひとかたまり。

大きめのボウルにバターをひとかたまり。 たらこも多めに入れておく。 これまた大きめの鍋に、たっぷりお湯を沸かす。 日本パスタ協会によれば、パスタ100グラムに対し水は1リットル、水1リットルに対し塩は5〜10グラムがよろしいようだけど、そこらへんはま…