【備忘録】『火垂るの墓』雑感。

ここのところTwitterで『火垂るの墓』が話題だ。いわゆる自己責任論的な視点での批判的ツイートが少なくない。しかしもちろん、『火垂るの墓』はそんな単純明快な話ではない。 『火垂るの墓』の原作読むと、親を失い家を失い未来を失った子ども達が「浮浪児…

仕事量をどのくらいにチューニングすればちょうどいいのか問題と「宥坐の器」

仕事をし始めて20年以上が経つ。ほんの7〜8年前に大学を卒業したくらいの肌感覚なのだが(←本当)、時の経つのは早い。いわば自営業なのでいつまで働くか日々の仕事量をどれくらいにするかはある程度コントローラブルである。幸せなことだが一方で自分で決め…

【備忘録】ミッキー経済vsポケモン経済

「日本にはもうアニメや漫画くらいしか売れるものがない」と自嘲気味にいう人がいる。 だがちょっと待ってほしい。 たとえばミッキーマウスが存在しないアメリカを想像できるだろうか。 アメリカのGDPは23兆ドル。 ミッキーの売り上げは706億ドルだ。 対して…

”シャリっ”とするアイスとワクチン接種。

「アメリカのいろんな街に行くとさ、オレ必ずあのアイスクリーム食べるんだよ。ほら日本でも売ってる、ドイツっぽい名前のアイス。 そうするとね、いつものあのアイスが出てくる場合と、“シャリっ”とするアイスがある」 友人Aが言った。 シャリっとするアイ…

【備忘録】加齢後の世界。

加齢とともに価値が見えてくるものがある。その一つが「ディナーショウ」 若い時は、最盛期を過ぎた歌手のショウになぜ大人は何万円も払うのか疑問だった 今ならその価値がよく分かる 自分の青春時代のスターと近くのホテルとかで会えるのだ スタンディング…

「勢い」考。

「勢い」とはなんだろうか。 先日、友人Aと話していてそんな話になった。 僕は不可知論者/agnosticなので、できるだけ超自然以外のものに答えを求める。 誰かが「勢いに乗っている」状態はどのようにして作られるのか。考えながら書いてみたい。 「勢いに乗…

配膳ロボは優良顧客の夢を見るか。

ネットで、年配の人がファミレスで店員に注文しようとして何度も「タブレットでご注文ください」と言われちゃうエピソードを読んだ。 切ない気持ちはわかる。 すごくわかるんだけど、徹底した無人化によってコスト抑えて実現した低価格と、人件費かけた人的…

「〇〇という論文があります!」という人へ。

コロナ禍でマスク着用やワクチン接種をネット上でお勧めしていると、「◯◯という論文がありますよね。知らないんですか(笑)」というような言葉をかけられることがある。 理にかなった反論もあるが、多くの場合は思い込み先行のいわゆる反マスク、反ワクチン…

Egalitarianのパラドックス~「官僚が金持ちの息子の名誉職になりつつある」

こんなツイートを見かけた。 「官僚は庶民に比べいい暮らししてるでしょ!」とかいうコメントとかDM送ってくる人いるんだけど、東大出身の標準レベルを考えてものを言ってほしいな東大標準の半分の給料で激務に働けとか、官僚が金持ちの息子の名誉職になりつ…

日面仏、月面仏ー「明日死ぬリスク」と「長生きリスク」のはざまで。

「明日死ぬかもしれないから、後悔しないよう好きに生きる!」。 医者稼業をやっていると時々そんな人に出会う。 その都度、そうですねと言いながら曖昧な笑みを浮かべる。 だが人生100年時代、明日死ぬリスクとともに、これから数十年「生きてしまうリスク…

非メモの魔力。

「若い時に工場の管理を任された。定期的に工員の面談をするんだ、一人一人。全員やると半年くらいかかる」 「はあ」 「“何か問題はないか”、“困ってることはないか”、1対1で面談する。それを全員やる。そうすると、工場全体の問題が浮かび上がってくる」 「…

人生後半戦について啓発本に書いてあることは2つしかない。

不惑を超えて、まだ惑う。 40歳手前までは、いわゆる人生指南本は遠ざけてきた。染まるのが嫌だったからだ。 それから10年経って、「車輪の再発明」も不要かと時々指南本を手に取ってみる。 当然ながら、人生のステージによって指針は異なる。 特に興味のあ…

眠れる夜のために。

「寝つきのいい男はダメだ。仕事のことを四六時中考えて、“ああでもないこうでもない”と悶々として眠れなくなるようじゃなきゃ、出世なんかできないよ」 恰幅のよいその人はそう言うと、自信満々に笑った。 寝つきのよい僕も、つられて愛想笑いをした。 なる…

「自分の頭で考えて!」にまつわるうさんくささについて(自ツイまとめ)

(保管用の自ツイまとめです。そのうち文章として形を整えたいと思っています)・「自分の頭で考えて!」とかいうの、そっちが望む答えを言わないかぎり「それは本当に自分の頭で考えたことなの?」「誰かに言われたことを鵜呑みにしてるだけ」と激詰めされ続…

アラフィフを襲う、バケツ1杯の水に墨汁1滴垂らしたくらいのある感情について。

(自ツイートを保管用にまとめたものなのでぶつ切れの文章です) ・逃げも隠れもしない団塊ジュニア世代なんですが、団塊ジュニアや氷河期世代は時々きちんと「こんなんワシらが望んでた未来とちゃうで」ってことは言っとかないといけないと思う。現状が変わ…

Twitter大量リストラに思う「一産業30年仮説」。

米国のハイテク企業でリストラが加速しているとかで、Twitterでも猛烈な首切りが行われているらしい。そんななか、一産業30年説という仮説を思い出した。 こんなものだ。 ①最初の10年、その産業が海のものとも山のものともわからない勃興期には、ギラギラと…

君は八千代チャーマーを見たかー社会の包摂とハローキティ。

人の世は不条理で、たとえば同じ時代に生まれ、同じスタートラインから「ヨーイドン」でスタートしたとしてもその後の人生はまったく異なる。 ぼくは1973年生まれでそれなりに頑張ってきたつもりだが、たとえば翌1974年生まれのハローキティには人気も収入も…

SNSとゲニウス・ロキ。

「大阪の会社はね、よく本社を東京に移すでしょう。 でも京都の会社は本社を東京に移さない。 なんでかわかります? 京都から本社移す必要がないからですよ」 そんな話を聞いたのは京都の霊山歴史館でだった。 KYOTOは世界ブランドで世界中みんな知っている…

地方都市にいくとポツンと建っている、おしゃれな繁盛パン屋は誰が経営しているのか?ー藤野英人著『ヤンキーの虎』をお勧めする。

「地方都市に行くとオシャレなパン屋がポツン建っていてかなり繁盛している。いったいあれは誰が経営しているのか。 それは、『ヤンキーの虎』だ!」 藤野英人『ヤンキーの虎 新・ジモト経済の支配者たち』(東洋経済新報社 2016年)はそんな本だ。ベッドタ…

我らが社会と陰と陽。

「俺らの世代は撤退戦。前の世代が広げ過ぎたものをうまく畳んで、次の世代に手渡すのが俺らの世代の仕事じゃないかな」 今から10数年前、友人Oがしきりにそんなことを言っていた。 当時は、そうは言ってもなにかやりようがあるのではと反論したりもしていた…

現代社会において頭の良さとはメタ認知である。

現代社会において、いわゆる「頭の良さ」とはメタ認知である。 たくさんの知識を持っているということは素晴らしい。だが、インターネットと知の結合により、知識そのものを持っていることの相対的価値は下がっている。自分自身で知識を持つことの大事さはい…

友とお酒と旅の空。

「読んじゃったから、これあげるよ」 別れ際に旧友Rが一冊の本をぼくに手渡した。 ありがとう。もらってばかりじゃ悪いから、なにかお返しを…そう言いながらぼくは自分のカバンをあさり、かわりに別の本をRに渡した。物々交換成立。 〈「俺たちは葬式にもウ…

やり遺した仕事のことなど。

やり遺したことがある。 社会制度というものは、その国やその社会の国民性や国民感情の上にある。 だから医療制度を考えるには、その国その社会の死生観や倫理観を熟知しなければならない。 制度を国民生活を入れる器とすれば、器におさまる国民生活をよく分…

リモートワークと陰と陽。

社会がどう変わってゆくかに野次馬的関心がある。まだまだ予断を許さないとはいえ、2022年のゴールデンウィーク明けにコロナ感染の爆発がなかったことは日本社会に自信を与えた。大多数がワクチン接種を終えたあとであれば、2022年のゴールデンウィークくら…

「私は自分と同意見でない人は許すが、彼自身のもっている意見に一致しない人間は許せない」 byタレーラン

「私は自分と同意見でない人は許すが、彼自身のもっている意見に一致しない人間は許せない」 フランス革命のころの政治家タレーランの言葉だ(河盛好蔵著 『エスプリとユーモア』岩波新書1969年 p.114)。 プリンシプルのない人とはつきあいづらい。 あっち…

「あたまの良さ」と「あたまの悪さ」のあいだで。

「科学者になるには『あたま』がよくなくてはいけない」。同時に「科学者はまた、『あたま』が悪くなくてはならない」。そんなことを、寺田寅彦が書いている(『科学者とあたま』。角川文庫『読書と人生』p.91-97)。 もちろんあたまが良くなくては科学研究…

”偉き人”と”完き人”

若い人へ。 ネット上では社長や教授のハイパーアクティブなツイートを見かける。「何者かに成れ」という圧力が強い世の中である。 だが、あれを見て「俺はまだまだだ」と凹む必要はない。 なぜなら、社長や教授は『鬼滅の刃』の“柱”みたいなもの、渋澤栄一の…

〈『うる星やつら』は究極のダイバーシティ〉(by深井龍之介氏)考。

〈『うる星やつら』は究極のダイバーシティ社会〉。そんなことを深井龍之介氏が書いている(『Forbes JAPAN』2022年6月号p.125)。〈『うる星やつら』には、悪態ばかりついている二重人格の女の子(ラムの友達ラン)もいれば、とんでもない食いしん坊の僧侶…

「我もまた、旅立つ者である」

遠藤周作氏の書いたものの中に、「タバコを吸う人はタバコを吸う医者にかかれ。酒飲みは酒飲みの医者にかかれ」という趣旨のものがあったように思う。タバコ飲み(懐かしい言葉ですね)の気持ちはタバコ飲みにしかわからないし、酒飲みの気持ちは酒飲みにし…

あらかじめ失われた「ふるさと」について。

浅田次郎氏に『母の待つ里』という作品がある。これ以上は書けない。 マエストロの作品構成力、人物造形、物語の運びが冴える逸品であり、45歳以上の都市生活者および都市近郊生活者なら刺さると思うのでぜひ。お読みいただければ今回のテーマと隣接する作品…