3分診療でどこまでできるか13『変化を伝える』

3分診療のままでよいとは思わない。それでもなお、できることがある。

健康な状態というのはある程度の幅の中で揺らぎながらも安定しているものだ。
例えば体重ひとつとっても、プラスマイナス数キロの増減はあってもそんなに大きくは変わらないのが健康状態。どんな人でも多少の増減はあるが、その増減は一定の幅の中でおさまっている。
こうした、「ゆらぎながらも安定している」状態を恒常性、ホメオスタシスと呼び、生命の特徴の一つである。

病気のときはこの恒常性が崩れてしまう。
ずっと60kg前後の体重で安定していた人が数か月で10数キロ体重減少した、なんて聞くと、医者は「病気ではないか」と疑う。恒常性が崩れているかもしれないからだ。
言葉を変えると、大きな変化や急激な変化は病気の兆しかもしれない。
皮膚にできものが出来て医者に相談した場合、「数か月で大きくならなければ大丈夫だよ」なんて言われるのも、数か月で大きく変化しないものは悪いものではなかろうと言う推測に基づく。がんなどの悪いものの場合は、急激に変化するのが基本だ。

だから病院で体調不良を相談するときには、たとえば「体重が45kgになった」という現在のピンポイントの状況だけでなく、「○か月前は○○kgだったのが、今は45kgになった」という変化を伝えるとものすごく有意義だ。
3か月前に46kgだったのが今45kgなら変化はほとんどなく病気の可能性は低いが、3か月前に60kgだったのが今45kgなら変化が大きく、もしかしたら病気かもしれないからだ。
大きな変化、急激な変化があるかどうかに敏感になって、それを伝えることも、3分診療の質を上げてくれる受診のコツの一つなのである。

 

とにかく明るい安村「安心してください、穿いてますよ」大流行の裏を読む。

流行り言葉や流行歌、一世を風靡する人物には時代の無意識が反映されている。
時代に足りないものを人々が本能的に求める結果、その時代に欠落しているものが大流行するのである。

今、ぼくが憂いているものは、とにかく明るい安村氏の「安心してください、穿いてますよ」の大流行の裏側に潜んでいる現代の病巣だ。
「安心してください、穿いてますよ」という言葉を人々が求めているという現象から、現代日本に欠落しているものが見えてくる。欠落するものを補うために、人々はこの言葉を心の底から求め、誰かに言って欲しいと願っているのである。

 

それにしても、世の中「穿いていない」人はそんなにも多いのだろうか。

 

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

 

 

脳内アメリカ人、『アンパンマン』を語る。(R)

ここのところアイン・ランドというロシア系アメリカ人の小説、『肩をすくめるアトラス』(2004年 ビジネス社。アメリカでの出版は1957年とのこと)を読んでいるせいか、こんな嵐の晩には心の中で脳内アメリカ人が動き出す。
今晩の論題は「アンパンマン」のようである。

「アンパンマンだって?
オーマイガッ、あんなものを子供に見せるなんてまったくどうかしてるぜ。
いいかい、困っている人に自分の顔をタダで分け与えるなんていうけれど、それは本当に彼らのためになるのかい?
与えられるばかりでは、自分でなんとかしようと努力すらしなくなるじゃないか。
アンパンマンは人々から自立心を奪い去ってるんだぜ、ユーノウワライミーン?

おいおい、しかもこのアニメにはこの世で一番大事なものが出てこないじゃないか。
一番大事なもの?
決まってるじゃないか、マネーだよ、マネー。
M-O-N-E-Y、マネー。
農業と小規模工業で成り立つ物々交換の世界って、これじゃあコミュニズムじゃないか。
21世紀のこのグローバル資本主義の世の中でそんなものを子供に見せるなんて、アンビリーバブルなビヘイビアだぜ。

しかもだよ、アンパンマンのアイデンティティはどこにあるっていうんだい?
バイキンマンに顔をやられたらすぐアンクル・ジャム、as known asジャムおじさんに新しい顔をつくってもらうだろ。
彼の個性や人格は頭部に存在するんじゃなくて、体幹に存在するってわけかい?
人格っていうのはさ、心臓=ハートにあるんじゃなくて、脳=ブレインにあるんだぜ。
次から次へとブレインが入れ替わってもアイデンティティが保てるなんて、not サイエンティフィックでスーパーナンセンスじゃないか。

それにさ、敵のバイキンマンとの戦いだってぼくたちアメリカ人からしたら信じられないよ。
バイキンマンの本拠地がわかってるのに、最後までとどめを刺さないだろ?
ウィーハブリアルエネミーズインザワールド、世界にはリアルな敵がいるんだぜ。
奴らを見つけて、追い詰め、打ち負かさなきゃならない。
フォーザフリーダム、自由のためにね。
毎週毎週バイキンマンが逃げるのを見逃してるが、あれじゃあ馴れ合いじゃあないか。
それともアンパンマンはチキンかい?
さ、今こそ無人戦闘機を飛ばすんだ!

それはそれとして、バイキンマンは立派な奴だぜ。
何度打ち負かされても、カウントナインで必ず立ち上がる。
己の欲望に忠実に、才能のすべてを打ち込んで素晴らしい発明を毎週繰り出す。
ネバーギブアップ、決してあきらめない、he is THE man、奴こそ男さ。

HAHA、話が長くなっちまった。
早くしないとアンチョビのピザが冷めちまう。
バドとクアーズで乾杯と行こう。
チアーズ!!」

....脳内アメリカ人がうるさいので、そろそろ寝ます。
(FB2013年10月16日を再掲)

 

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

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