葬式と紅白まんじゅう(再掲)

昔、上司のO先生が言った。
「カミさんの親戚の葬式が福島のほうであってね。
驚いたことにその地域では、88歳以上(うろおぼえ)のおじいちゃんおばあちゃんが亡くなったときには黒と白の幕じゃなくて、紅白の幕を張るんだよ。
天寿をまっとうされた、めでたい、ということでね」

 

死とは無条件に忌み嫌われるものと思っていたぼくはへえと感心し、なぜだか『ガリヴァ旅行記』にでてくる賢い馬の種族フウイヌムの心穏やかな旅立ちの姿、シュヌウン(スウィフト『ガリヴァ旅行記』 新潮文庫 昭和26年 p.345-6)を思い出した。

フウイヌムたちは皆、老衰で死ぬのだが、臨終の10日ほどまえになるとソリに乗って近所に挨拶回りをする。
「それがまるで余生を送りにでも、どこか遠いところへ出掛けるといった格好」(上掲書 p.346)で、「臨終といっても、友人や親戚の者は喜ぶでもなければ、悲しむでもない、いや、かんじんの死んでゆく当人さえもが、その未練の無さといったら、まるでちょっと隣人を訪ねて、それが暇を告げて帰ってゆくといった形で、悲しい顔色などは薬にしたくもない」(p.345)のだとスウィフトは描いている。

現実の世界では、葬儀の風習は時代によって変わっていくのだろうが、調べてみると仙台の一部でも天寿をまっとうされた方の葬儀で紅白幕を用いる風習がある(あった)ようだし(HP真ん中らへん「●日本の風習/女性(北海道)」の項)↓
http://www.osoushiki-plaza.com/institut/dw/199210.html
長寿の方のご葬儀のときに、福島では紅白まんじゅうや赤飯、沖縄でも紅白まんじゅうが配られる(配られていた)ようだ↓
http://nazonews.seesaa.net/article/360648173.html
伝聞、ネット情報のみなので、詳しい方がいたら教えてください。

天寿をまっとうされた方の葬儀で配られるという紅白まんじゅうの意味について、しみじみ考える秋の宵。
(FB2013年11月3日を再掲)

 

 

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