一流と二流を分けるもの(R)

人間の存在そのものに一流も二流もないが、職業人として一流か二流かを見分けるにはライバルを聞くとよいという。
この場合のライバルは、実際にしのぎを削っている商売がたきではなく、職業上の仮想好敵手くらいに思ってください。

「あなたのライバルは誰ですか」ときかれた時に、「同じ会社の同期のアイツがライバルです」と答えるなら残念ながら二流の職業人。
「同業他社で同じポジションの誰それがライバル」と答えたらまあ一流。
そして超一流は、「アメリカ/ヨーロッパ(など海外)の同業他社のなんとか氏が仮想ライバルです。あいつには負けたくないとひそかに思ってるんですよ」と答えるそうだ。
超一流の目は、社内も国内もすっ飛ばして常に世界を見て、「オラ、もっと強いやつと闘いてえ。なんだかワクワクしてきたぞ」と思っているわけですね。
出でよ、神龍

そんな話を2007年ころにビジネス雑誌で読んで、折に触れていろんな人にライバルをたずねてみた。
はじめはライバルを答えてもらった後に「ライバルが社内の同期の人は二流だそうですよ」とタネ明かしして悦に入っていたが、なんとなくそれも卑しい行為な気がして、最近では先にタネ明かししてからきくようにしている。

先日、20代の若手職業人数人とお会いしたときにやはりこの質問をしてみた。
入試や就活などあまたの面接を乗り越えてきた人ばかりなので、尊敬する人や影響を受けた人を聞いても新しさがないからだ。
幸い、ライバルを聞かれたことはなかったようで面白い答えがたくさん聞けた。
ザッカーバーグイーロン・マスクネルソン・マンデラやマララさんなど、ビッグネームが景気よくライバルの名前として挙がるなか、席の一番はしの男性だけがじっと黙り込んでいた。
あなたのライバルは誰ですか?と水を向けると、彼は重い口を開いて言った。

「…皆さん、ほんとにすごいですね。
超一流の人は、世界をライバルとして仕事をしていると聞いて、さっきからずっと考えていたんですが浮かびません。
やっぱり、ぼくのライバルは○○村です。

ぼくは××市役所で働いているんですが、ぼくらの地方は過疎が進んでしまって止まらないんです。
そのなかで自治体職員として働いていると、お隣の市や村は、どんな対策を打っているのかいつも気になります。
どうしたら若い住民を増やせるか、そのことばかり昼も夜も考えています。
お隣の××村の人口が増えたと聞けば、どうやったかすごく気になってしまいます。

だからやっぱり、ぼくのライバルは××村です」

彼は噛み締めるようにそう言って、まっすぐな目でぼくを見つめ返した。
ぼくは愚かな質問をした自分が恥ずかしくなり、いっそライバル云々の質問がなかったことにならないかと天に願ったがムダ、時間は戻らない。
仕方がないから、願いがかなうように今日からドラゴンボールを集めに行ってきます。まずは一星球からだな。
(FB2015年9月15日を再掲)

 

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