良い仕事の敵、もう一つの3I (R)

良質の仕事の敵は3つの「I」だ。
すなわちイデオロギーIdeology、無知Ignorance、惰性Inertiaである(参考文献:A・V・バナジー、E・デュフロ著『貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える』みすず書房2012年 p.35。原文は政策の失敗の理由について書いてある)。

この場合、イデオロギーは広く思い込みや先入観も含む。
「この仕事は昔からこういうものだ」「エンジニアならこうする、医者ならこうする」という思い込むことは仕事の質の向上を妨げる。...
こうするべき、こう決まっている、当たり前、などなどはすべて成長の阻害要因になる。
何度も何度も疑ってそれでも残るものだけが真実の砂金であり、美学と呼ばれるものだろう。

無知もまた自覚しにくい。
ある程度仕事をこなしていくと、それなりの知識がつく。
それなりの知識と経験がつくと仕事はそれなりに回せるようになる。
だが自分が知っていることが世界の全てではない。
無知を自覚した者だけが、無知からちょっとだけ脱することができる。

惰性もまた恐ろしい。
慣れと惰性は地続きで、慣れたときほどミスも起こりやすい。
惰性を防ぐためには定期的に仕事の棚卸しをしてみることが有用だ。

しかし3つの「I」から完全に自由になることは、少なくとも一人では不可能である。
だからこそ時に人は他の分野のスペシャリストと他流試合することが大事になる。
自分の領域では当たり前、慣例となり常識であることが、他分野の人にとってはまったく当たり前ではないことに気づかされるからだ。
自分が持つ3つの「I」に気づくことが、成長の第一歩である。
そのために他流試合にはどんどん挑んでいかなければならない。

こうして考えを文字化してほかの人に読んでもらい、批判してもらうのもまた、他流試合の一つだ。
さあ、来い。
(FB2015年6月21日を再掲)

 

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