ミニマリストに憧れて~「何もない部屋」で暮らしたいのに。(R改)

恥ずかしながら片づけが苦手である。
立って半畳寝て一畳、風を友にし石を枕にする生き方に憧れるが、今流行りのミニマリストの足元にも及ばない。このままミニマリストに憧れてバラをくわえて踊っていても、いつまで経っても地下の酒場のカルメンと今夜メトロでランデブーできる日は来ないであろう。

このままではいけない、と一冊の本を手に取った。
近藤麻里恵著『人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版)である。

よく売れているのは知っていたが、何しろ出版元からしてサンマーク出版だ。
孔子曰く『怪力乱神を語らず』、宮本武蔵曰く『神仏を尊んで神仏を頼まず』。
いわゆるスピリチュアルな匂いのするものは信じる信じない以前に出来るだけ遠ざけて生きてきた。
歴史上何十万人もの宗教者が生涯をかけ求道してきたものをインスタントにわかるわけがないし、スピリチュアルなんちゃらとかは例え信じるとしても素人がそう軽々に口にすべきではないと思う。
よくわからんものをさも分かったように語るのは罪深いことくらいは知っている。
ヤハギとは違うのだよ、ヤハギとは。

そんな中でのサンマーク出版購入にはワケがある。
片づけられないのである。
かけがえのない本やCDが増え過ぎて捨てられず、圧殺されそうな勢い。
これでは本やCDを置くために家賃を払っているようなものだ。

こうなったらスピリチュアルくさい本でもいいから読んで片づけを学び、ついでにときめいてやろうじゃないかTonight、というやけっぱちな気持ちでこの本を購入した。
結論からいうと、思った以上に良い本であった。
著者の片づけ愛がびんびんに伝わってくるし、ぼくの苦手なスピリチュアル・フレーバーも外角ぎりぎりストライクゾーンを外れないものであった。
一言で言うと、書き方が上手い。

「物を捨てる」という行為についてくるそこはかとない罪悪感を「感謝する」「ものと出会えた縁に思いをはせる」という言い方で和らげる。
ものをため込むことは「過去への執着」「未来への不安」の表れだが、「今」「ここ」を大切にせよと説く。
現代日本人の精神性にわずかに残るアニミズム=すべての物に魂が宿る、禅的なもの=戻らぬ過去へのしがらみとまだ見ぬ未来への不安を断ち切り、今ここを味わう、というところに訴えてくる本のつくりになっている。

遅ればせながら良い本に出会えたと思う。
この週末、本棚にかけがえのない本がまた増えた。
(FB2015年6月1日を改編再掲)

 

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