3分診療でどこまでできるか3『データは持っていく』

3分診療のままでいいとは思わない。それでもなお、できることがある。

 

はじめて病院を受診する場合、それまでの検査データが手元にあれば全部持っていくことが重要だ。

体温や血圧をみればわかるように、健康なときというのはゆらぎつつも安定している。

日によって時間によって体温が37.2度だったり36.5度だったりするけれど、ある程度の幅のなかでゆれうごきつつも健康なときは急激な変化というものはない。
逆にいうと、病気のときというのはその一定の振れ幅から大きく逸脱するときなのだ。

急激な変化(=病気の可能性がある)かどうかは、以前との比較できまる。
なにかの検査をして、その時点のピンポイントの結果が分かるだけだと相当悪い結果でないと病気かどうか断言できないけれど、過去のデータがあると比較することができる。

比較することによって検査結果の持つ意味が何倍にも重くなる。

たとえば「だるい」という症状で病院にかかった人がいたとする。
「だるい」という症状は漠然としていて単なる睡眠不足や疲労で起こることのほうが多いが、チェックすべき病気に貧血がある。
血液データの中だと「Hb:ヘモグロビン、血色素量」という項目などを確認する。
検査会社SRLサイトによれば、Hbの正常値は男性13.5以上、女性11.3以上。
だが特に高齢者になると、10くらいの人もふつうにたくさんいる。

「だるい」という症状の人が受診して、一発勝負の血液検査でHb10だと、貧血が原因かどうかは何とも言えない。
しかしたとえばそのときに数か月前に受けた健康診断のデータを持参していれば、数か月前のデータと比較することができる。
健康診断には毎年のデータが載っていることがあるので、数か月前も去年もおととしもHbが10くらいだったら問題ない。その人の定常状態だからだ。
しかし仮に数か月前の健診ではHbが14とかだったら、Hb14から10への数か月での低下は異常だ。おそらく「だるい」症状の原因は貧血で、どこからか出血していないか検査することになるだろう。

どこか病院を受診するときに、今までやった検査データが家にあれば、必ずご持参ください。たとえ3分診療だとしても、過去のデータと比べることで診療のクオリティがぐーんと上がります。