虫の目、鳥の目、魚の目(R)

虫の目、鳥の目、サカナの目。
ものごとを考えたり、伝えるときには、この3つの視点が必要である。

昨夜、地域ケアのフォーラムに向けた打ち合わせがあった。
政治、介護、医療関係者が集まりこれからの地域ケアについて話しあったのだが、それを例にとると3つの視点はこんな具合になる。

 

虫の目は地に足のついた徹底的な現場目線である。
ミクロな事象にこだわり、個というものから考える。
地域ケアでいえば、漠然とした誰かではなく、Aさんという高齢者と家族が何に困りどんな助けを必要としているかを調べ考え抜く。
そうした個の物語というのは、介護や看護、医療といった現場が得意とする分野である。

しかし虫の目だけでは問題理解や解決に限界がある。
個の物語や問題は、自治体や国の制度との関わりにより左右されるからだ。
また、部分最適を単純に足していっても合計した全体ではうまくいかないことだってある。
自治体全体でみた場合に人口構成はどうなのか、使える資源はどれだけあるのかなど、全体像を空高くから見なければならない。
鳥の目である。
こうしたマクロ的な視点は、政治や行政が得手とするところだろう。

最後のサカナの目というのは、流れを読む目だ。
人口構成は毎年どう変わっていくのか、変化の流れは急なのか緩やかなのか。
ある政策を打ったらその影響で状況はどう変わるのか。
そんな流れを読むのがサカナの目なのだ。

うまくものごとを伝えている人たちは、こうした3つの視点を意識的に組み合わせて他人に説明している。
少子高齢化問題をテレビ番組がとりあげる場合を想定してみよう。
オープニングは都内の公園の画像。
日曜日だというのに子供たちが遊ぶ姿はなく静まりかえっている<ミクロの視点=虫の目>。
画面が変わり、2014年の人口構成のグラフ。
日本全体で子供の数が減っていることを示す<マクロの視点=鳥の目>。
○○町での少子化対策の事例。
○○町ではこの取り組みで出生率が上昇<個の物語=虫の目、流れ=サカナの目>。
国は、○○町の取り組みを全国に拡げるつもりだ<マクロ視点=鳥の目、流れ=サカナの目>。
評論家や研究者による少子化問題の歴史的な変遷解説<流れ=サカナの目>。

こんなふうに3つの視点を行き来しものごとを理解し伝えていくわけだが、ぼくは医療現場の人間として、あくまでも個の物語にこだわる虫の視点を基本としたい。
視点の移動に時にくらくらめまいがすることもあるが、目新しいことをして世間の目を集めるには、目まぐるしい目線の移動にもめげずに、沢山の目をもった虫のように地を這いながら勢いよく土煙をあげ邁進していくことにしよう。
王蟲か。
(FB2014年8月13日を再掲)

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