3分診療でどこまでできるか14『できなくなったことは何かを伝える』

3分診療のままでよいとは思わない。それでもなお、できることがある。

病院受診をするときには、変化を伝えるのが大事、と以前にお伝えした。
体重が45kgです、というピンポイントの情報では情報量が少ない。しかし、3か月前に60kgだったものが45kgになったという変化の情報が加わるだけで、病気の診断のためにぐっと有用なものになる。
医者に変化を伝えるときに大事なのは具体性だ。

 

「最近筋肉の力が落ちた」だけではなく、筋肉の力が落ちたためにどんなことができなくなったかを伝える。

同じ筋肉の力が落ちたという訴えでも、70歳の人がフルマラソンが出来なくなった場合には加齢のせいかもしれない。駅まで歩けなくなった場合には病気の可能性がぐんと上がる。

腕の筋肉の力が落ちた場合も、指先の力が落ちて鍵が開けられないときと、肩などの力が落ちてたたんだ布団を押入れにあげられなくなった場合では医者が疑う病気が変わってくる。

階段をおりにくくなった時とのぼりにくくなった時でも疑う病気は変わる。
鍵が開けにくくなったときや階段をおりにくいとき(=つま先の力が落ちたとき)は体の中心から遠い筋肉=遠位筋の筋力低下を起こす病気を考える。
布団を持ち上げにくい(=肩や二の腕の筋力が落ちたかも)とか階段を上りにくいとき(=太ももや腰回りの力が落ちたかも)は体の中心に近い筋肉=近位筋の筋力低下をきたす病気をまず考えるのである。

受診の際には、症状によってできなくなったことの具体例を挙げられる準備をしておくことも、3分診療のクオリティを上げることにつながってくるのだ。