3分診療のままでよいとは思わない。それでもなお、できることがある。
本間正人先生に教えていただいたのだが、ここ数日ネットで<ロキソニン頭痛薬は以前に劇薬指定されていた薬。実は死亡率が50%の恐ろしい薬だ>というまとめ記事が出回っている。
死亡率50%ならそれはすでに薬ではなく毒だ。
副作用のない薬はないが、飲んだ人の50%が死亡しているはずがない。
副作用がゼロの薬はないし、だからこそ注意して付き合わなければいけない。医者がすべての薬のすべての副作用を知っているということはないし、患者さんのほうから明確に伝えてはじめて副作用かもしれないと医者の考えを導くことができる。伝え方にはコツがあるので、そこらへんのところをみっちり拙著に書かせていただいた
☞http://www.amazon.co.jp/dp/441815423X
さて、噂の<ロキソニンの死亡率は50%>というまとめ記事を読んでみると、本文には一切そのことが書いていない。いわゆる「釣り」記事だ。
Hagex著「ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い」(アスキー新書 2014年)によれば、「釣り」記事をチェックする方法の一つに<この記事がすべて本当だったらどうなのかというチェック方法>がある(同書 p.69)。
もしロキソニンが死亡率50%の薬だったら、とっくの昔に発売禁止になっているはずだ。しかしそんな話は聞いたことがないし、自分や身の回りにもロキソニンを時々飲んでいる人がいてもみんな生きている。
タイトルを含めてこの記事がすべて本当だったら、という見方で読むと、明らかに現実的ではないのだ。
「釣り」記事を書く人の動機は、
<①人から注目されたい
②いたずら・ストレス解消・暇つぶし
③自分の文章力・釣り師としての実力を試したい
④金銭をもらっているため>(同書p.21-22)
だという。
「ロキソニンの死亡率は50%」のまとめ記事は、刺激的なタイトルでネット上の注目を集め、横についている広告をクリックさせて稼ぐビジネスモデルのようで、上記の①と④にあたるだろう。
記事のネタ元を掲載しているのは最低限の良心で、まとめ記事にも元記事の本文にも「ロキソニンを飲むと50%の人が死亡する」なんてことは一切書いていない。
本来ならこのまとめ記事をマクラにして、薬で大事なポイントは種類と量とタイミング、という話を書くはずだった。
そこらへんはこちら↓
いずれにしても、薬もネット記事も、うまくつきあうにはコツがいるようである。
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