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マスコミの医療情報をどう読むかー3つの限界について(R)

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ネットリテラシーにからめて、2013年に書いたものを再掲。
2015年に日経新聞フィナンシャル・タイムズを買収したので、書いたときと今とはちょっと事情が違いますが。日経新聞、やるなー。
ネット情報とのつきあいかたはぜひ拙著3分診療時代の長生きできる受診のコツ45 | 髙橋 宏和 | 本-通販 | Amazon.co.jpをご参考にしてくださいませ。

(以下再掲)

患者さんと話していて時々「おなかいっぱい」になるのは、「テレビで言っていたけれど」「新聞に書いてあったけれど」という言葉だ。
その都度ぼくが言うのは、「完全に嘘ではないけれど、話半分に聞いておいてくださいね」というセリフである。

多くのマスコミには構造的な限界が3つある。
第一に視聴率や販売部数。
視聴率や販売部数のために、ものごとのセンセーショナルなところだけを切り取って報道されてしまう。
基礎研究で発見があると、明日にでも治療に利用できるような取り上げかたがなされ、その都度日本中の臨床医が「すぐには臨床治療に使えません」と患者さんに説明する。

第二にスポンサー。
新聞も民放も、「お客さん」の顔を見て仕事をせざるを得ない。
「お客さん」とはお金を出してくれる人のことで、
月々数千円の購読者より、何百万の広告料を払う広告主のほうが上客になってしまう。
病気についてできるだけ怖いことを言って脅かしたほうが、広告主の製薬会社や保険会社の売り上げが伸びるというものである。
現場の記者が一生懸命取材してどれだけ良い記事を書いても、編集の段階で「報道しない自由」が行使されることはありうるだろう。

第三に当事者でないことの限界。
当然ながら、それぞれの分野の当事者が一番よい情報を持っている。医療記者よりも医療者、経済記者よりも経済人のほうが生の情報を持っている。
カバーする領域の問題もある。
新聞記者はそれぞれの専門分野があるが、それでも医療担当は外科から小児科から漢方から終末期医療から健康食品までカバーしなければならない。
もしそれだけ幅広い分野において、外科医より小児科医より漢方医よりホスピス医より自分のほうがよく理解している記者がいるならば、当事者として活躍してもらったほうが社会の役に立つというものだ。
人手不足のバラエティ系テレビ番組になるともっとカバーする範囲が広がる。
医療から経済から国際政治から芸能まで、言葉を変えれば
MRIからFRBからUAEからAKB、時にはCCBまでカバーしている状態であれば、
ロマンチックも止まらないというものだ。

当事者意識の欠如は今ひとつ自覚されていなくて、
そもそも、「これからはグローバル時代」「若者は世界と対等に戦わなければならない」と日経新聞などはあおるが、
日経新聞の英字紙、THE NIKKEI WEEKLYが、フィナンシャルタイムズ
と対等に戦っているという話は寡聞にして聞かない。

そうは言っても、世の中をきちんと正確に理解するにはやはり新聞が一番である。
自分自身で収集できる情報は本当にごくわずかだし、ネットのニュースも出どころはやっぱり新聞だ。
できるだけ信頼できる新聞を探して慎重に吟味した結果、
今年から東京スポーツ、略して東スポだけを信じて生きていくことにしようと思う。
(FB2013年1月22日を再掲)