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事前の期待を上げすぎると顧客満足度は下がる~医療はサービス業か(R)

S=P+O-pE.
信州の哲人医師 I先生はそんな式をホワイトボードに書き、言った。
「結局、これなんですよ」
これからの医療のカタチを模索し、答えを求めているときのことであった。

SはSatisfactionで満足度、OはOutcom=結果、PはProcess=過程。
pEって何だろう、と思っているとpre Expectation,事前期待だという。
「満足度を高めるのには結果だけではなく過程も大事なんだけれど、どうしても医者ってのは結果ばかりに目がいってしまって、"治ればいいんだろう"ってなりがちです。
"よくなったのになんで文句言うんだ"ってね。
だけど過程も同じように大事で、そこのところに気がつくと医療への満足度ってのはもっと高くなる」。
I先生はそういって話を続けた。
「それと、pEも大事。
事前の期待が高いほど、"なんだ、こんなもんか"と満足度は低くなる。
だからね、医療への事前期待を思いっきり下げると、満足度は高くなるんだな」
そういってI先生はにやっとわらった。

マスコミが「いい病院100選」とか「すべてを治す名医」なんて医療への事前期待をあおる時代には、かえって患者さんの満足度が下がるという困った事態が起こる。
あんまり期待させないほうが吉、というのも皮肉ではあるが。

ひとくちに医療と言ってもいろいろで、1分1秒を争う救急医療と、町のかかりつけ医みたいな存在では、満足度を高めるアプローチは全く異なる。
それぞれ便宜的に急性期医療と慢性期医療と呼ぶことにするが、やはり急性期医療ではP=過程よりもO=結果が絶対的に重要であろう。
豪華絢爛な救急室で、全く非の打ち所のない敬語を操るスタッフに対応されても、本来救命できる状態なのに下手な治療をされていい結果が出ないならば満足度は低くなる(と思う)。
逆に、どんなに古びた病院で、口と気の荒いスタッフに対応されたとしても、最速最善の治療が施されて運良く救命されたのならば満足度は高い(と思うがどうなんでしょうか)。

医療者のはしくれとしてO=治療結果がなによりも重要で、少しでもいい結果がでるように病院というのは動くべきだと思うが、同時に病院という場における「過程」にももっともっと目が配られるべきだと思う。

病院や医療がサービス業かどうかは意見の分かれるところだ。
ぼく自身は「医療はサービス業」と言い切られるとおおいに抵抗を感じるほうである。
サービスの語源はラテン語のServusで、これは奴隷という意味だという。ラテン語のservusが英語のサービスになり、召使いを意味するServantになった。
一方で、病院=Hospitalの語源は同じくラテン語のHospicsで、こちらは客人たちの保護という意味合いらしい。
Hospicsはホスピスやホスピテリティ(おもてなし、善意)といった言葉にも形を変えて今も残っている。
(「ホスピタリティの極意」:http://www.hospitality-gokui.com/a1.htmlより
医療はおもてなしや善意からはじまったものではあるけれど、奴隷ではないだろうと思うからこそ「医療はサービス業」という言い方には違和感を感じるのではないだろうか。

どんどん横滑りするが、ひところ病院で患者さんを呼ぶのに「○○様」「××様」と呼ぶのが流行った。
好き嫌いはあるだろうけど、そこまでへりくだらなくてもいいだろうと当時思ったものだ。
昔勤務していた病院で「○○様」と呼ぶようにというおふれが出たとき、ある患者さんが言った。
「○○様なんて呼んでもらってもちっともうれしくない。
こっちは好きで病気になったわけでもないし、好きで病院に来てるんでもないんだから」。
ごもっとも。

患者さんを「○○様」と呼んでおけばいいだろうというのではなく、特に慢性期の病院においては、もっとしっかりP=過程の部分を高めていくことを考えてもいいように思う。
具体的にはなにかと言えば、「待ち時間」。
これだけ医学が発達してもなお、「病院への不満ナンバーワン」の不動の地位を誇るのは「待ち時間」だ。
それでは、病院の「待ち時間」問題は、どうやったら改善することができるだろうか。

続きはまた。
(facebook 2013年8月3日を再掲)

 

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