「80歳以上の患者さんにはポジティブな人が多い」~バイアスの話(R)

バイアスの話で思いだしたので再掲。

 

先日、友人のドクターと話した時にこんな話が出た。

「80歳を越えてる患者さんって、ポジティブっていうか人のいい人が多いよね〜」。
そんなことをSさんが言う。

 

確かに自分の診ている方でも100歳の通院患者さんがいるが、いつもニコニコして「おかげさまで」と周りに感謝の心を忘れない。

そんなことを思うと勢い余って『感謝の心で健康長寿』とか『長生きの人はなぜポジティブなのか』などという似非自己啓発本やインチキ健康本を出しそうになるが、こんなときこそ一歩立ち止まって冷静に考えなければならない。

つまり、ポジティブということをどう定義するか、
仮に長寿者にポジティブな人が多いのが真実だとしても、長寿だからポジティブになったのか、ポジティブだから長寿になったのか、あるいは長寿もポジティブも全く別の原因の結果なのか、さまざまなことを調査検討しなければならない。
特に見落としがちなのが調査対象のバイアス、偏りである。
医療者が会っているポジティブな長寿者というのはほとんどの場合、定期的に病院に通っている人なので、全く病院に行く必要のないスーパー健康な人や病院嫌いの人が実際どんな人なのかというのは意識的に調べないとわからない。
そこのところを見落として、自分の診ている人だけを見て『ポジティブさが長寿の秘訣』と結論づけるのは大いなる間違いである。

もしかしたら日本のどこかに、病院嫌いで屈強な健康体を備えた超ネガティブで偏屈な長寿者ばかりが住む村があって、今日も人知れず互いの修羅を競いあっているのかもしれないのだ。


なんとも殺伐とした村である。
(FB2013年6月28日を再掲)

 

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