ネットで大炎上!内閣庁宣伝局サイトのエイプリルフール記事「マイナス消費税導入」に思う(R改)

たしかにあれはひどい。
今、ネットで大炎上中の内閣庁宣伝局のホームページの話である。

さっそくググって噂のページに飛んでみると、まず飛び込んでくるのは「国民の皆様へ~マイナス消費税導入のお知らせ」の文字だ。
びっくりして読み続けてみると、「昨今の経済状況を鑑み、予定されている消費税引き上げを中止し、マイナス金利導入に引き続き消費税もマイナスとすることが緊急閣議決定されました。これからは物品購入の際、定価の8%が払い戻されることとなります。国民の皆様に、謹んでお知らせ申し上げます。平成28年エイプリール・フール」と続いている。
なんと、内閣庁宣伝局によるエイプリル・フールの嘘、というわけである。

 

ネットのニュースによれば、このホームページが今、大炎上しているという。
消費税値上げにそなえ消費を控えて貯蓄に回している人たちがこれを見て「不謹慎だ!よりにもよってこの嘘はひどい」と大激怒しているそうだ。

 

イギリスなどでは大新聞やテレビでエイプリルフールに嘘を掲載したり放送したりする慣習があり、おそらく件のホームページはそれをマネしたものであろう。
かつてUSAトゥデイ紙も「バーガーキングで左利き用のLeft-handed whopperが販売開始」という広告を載せたりした。またBBCでは「暖冬と害虫駆除のおかげで、スイスではスパゲティの木が大豊作」と報じたこともある。ちなみにこの「スパゲティの木」というネタは欧州では繰り返し使われるらしく、伊丹十三も「友人のルドヴィク・ケネディがスパゲティの木の大不作という偽ニュースの映像を作った」とエッセイに書いている(『女たちよ!』新潮文庫 平成17年 p.45)。
日本でもエイプリルフールに、東京新聞が「100歳の双子、金さん・銀さんに“銅さん”がいた」という嘘記事を載せたことがあるそうだ。
http://matome.naver.jp/odai/2129437028032744301

 

しかしながら、政府のれっきとした広報機関である内閣庁宣伝局がこうした嘘を載せるというのはいかがなものだろうか。

 

ソビエト連邦での新聞報道を長年研究してきたモスクワのライヤー大学のある教授はこんなことを言っている。
<(略)こうした虚偽の発表が読み手に嘘であると受け入れられるためには、もともとその発表主体に信頼が無ければならない。その発表主体が発表している記事が常に真実だという唯物論的国民的認識があり、その認識を大前提として明らかに虚偽であるというシグナルが発されてはじめて、それは人民の間で革命的発展的熱狂をもって嘘として受け入れられるのである。逆に言えばその発表主体が一度でも虚偽の報道をしたことがあれば、読み手は常に報道を疑わなければならなくなる。モスクワでもシベリアでもそれは同じだし、カスピ海のほとりだろうがバイカル湖の湖畔だろうがそれは弁証法的にも科学的にも不変だ。つまり、その時代、嘘を嘘と見抜けない人はプラウダを読むにはふさわしくなかったのである。(後略)>(ブラフ・O・ウソツキー著『プラウダ~真実という名の嘘』 民明書房刊)。

今回の内閣庁宣伝局のエイプリルフールの嘘はそこらへんのところの把握が甘かったと言わざるを得ない。


そんなわけで、エイプリルフールに嘘をつくというのをジョークとしておおらかに楽しむというのは日本ではなかなか定着しづらい。
それでもなおエイプリルフールに嘘をついてみたいというのであれば、炎上や誤解、不謹慎とのそしりを恐れずに試みなければならないし、ぼく自身、その覚悟はあるつもりだ。

もちろん、「内閣庁宣伝局が『マイナス消費税導入』というエイプリルフールの嘘をついてネットで炎上した」という話自体が嘘である。そもそも内閣庁宣伝局という部署自体が存在しないのは言うまでもない。

だいたいからして税金というのは、上がることはあっても下がることなどないものなのだ。

 

皆様、良いエイプリルフールを。
(FB2014年4月1日を改変再掲)

 

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