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よく知らないまま論じるAKB48組織論

日本人にウケる「論」には3つある。日本人論、組織論、世代論である。

日本人とユダヤ人」以来、書店には定期的に日本人論の本が並ぶ。「アメーバ組織論」をはじめとして、強い組織づくりは常に模索されている。「アプレゲール」から「ゆとり世代」「さとり世代」まで、ほかの世代を手荒くひとくくりにしレッテル貼りしてけなしたがる人々は後を絶たない。

AKBを素材にウケる3つの「論」を展開すれば、世間の耳目を集めることができるのではないだろうか。AKBのことはよく知らないが、これぞまさに、悪魔的発想…ッ!!

よく知らないまま書くのでどうか温かい目で見守っていただければ幸いである。これもすべて、PVのためだ。


エンジェル投資家の瀧本哲史は、人材を売るビジネスには3つの壁があると説く。

「どの人材が売れるか分からない」「稼働率の限界」「売れれば売れるほど契約の主導権や交渉力がタレント側にうつる」という壁だ(『戦略がすべて』新潮新書 2015年 p.15-17)。

そしてその壁を乗り越えるために経営者側が取れる戦略が、「システム」「プラットフォーム」を作ってそれごと売るということで、その象徴がAKB48だという(p.17-24)。

誰かひとりのタレントを発掘してプッシュするのでは、そのタレントが売れるかどうかが不透明だ。それよりもある程度売れる可能性のあるタレントを何人もパッケージにして売ることで「どの人材が売れるか分からない」リスクを低減する。

一人のタレントがこなせる仕事には限界があるが、AKBというシステムが売れれば、AKBのメンバーの中で仕事を回すことで稼働率を上げられる。

たった一人のタレントが売れる場合にはマネジメント側よりもタレント側に契約の主導権が移っていくが、AKBというシステムが売れるのであれば、AKBという器を持っているマネジメント側がいつまでも主導権を握り続けられるというのである。

 

瀧本の分析を読むとあらためてAKBシステムが非常にえげつなく、マネジメント側にとってよく出来たものであることがわかる。

これに対し、ぼくが論じたいのはAKBシステムが「内輪もめ」「仲間割れ」を無くすシステムなのではないかということだ。過激思想グループの内ゲバを見れば分かる通り、「内輪もめ」「仲間割れ」は組織のエネルギーを奪い、組織を自滅に追い込む。

 

日本人論の名著の一つ、会田雄次『日本人の意識構造』(講談社現代新書 昭和47年)では、日本人の欠点の一つに「内部に敵を求める意識」を挙げている(p.27)。
<もちろん、ヨーロッパでも日本でも、競争相手は内部と外部双方にあるわけであるが、主として内側に敵を求めるという姿勢、これが日本の弱さではなかろうか>(p.27)
<内側に敵を求めることは企業の場合には、出世競争はまず同課の同年期の人間、販売競争はまず同業者からという形で競争者を選んでゆく。>(P.30)

 

ほかの国だって「内輪もめ」はあるだろうが、ほっておけば組織内部に敵を求めてしまう日本人的心の在り方をどうAKBはコントロールしているか。

AKBをよく知らないまま論じるが、そこには「序列を固定化しない総選挙と卒業」「『アイドルをアイドルたらしめるのは誰か』問題」「姉妹グループという仮想敵」という工夫がある。

絶対権力は絶対的に腐敗する。AKBシステムは総選挙と卒業により組織内の序列を固定化しないようにしている。ほかのアイドルグループにも卒業という仕組みはあったが、常に組織内の序列を可視化しながら流動化させる総選挙制度は画期的であった。この仕組みにより力関係は常に変化するため、主流派と反主流派などの派閥は固定化せず、「内輪もめ」によるエネルギーの損失は避けられる。

 

ある旅館で、従業員の気の緩みが問題になった。接客態度はだらしなく、「おもてなし」とはほど遠い有様。しかしそのたるんだ空気を一変させた一言があった。旅館のおかみが従業員を集めて言ったのはたった一言。

「みなさんのお給料をくださるのは誰かをよく考えて仕事をしてください」

給料をくれるのはもちろん旅館の社長だ。しかし給料の出所は、宿泊するお客様だ。
お客様が来て下さるからこそ自分の給料がいただける。そのお客様が喜んでくれればまた来てくれればまた給料がもらえるが、お客が失望すればそれも危うい。そこを意識させることで、サービスの質を上げたというのである。
AKBシステムでは、どれだけ売れようと常に劇場と握手会で「誰が自分たちをアイドルにしてくれているのか」をメンバーに意識させ続ける。メンバーの目は組織内部の「敵」に向かわず、クライアントであるファンに向けるように仕組まれている。

 

ダメ押しになるのが姉妹グループだ。トップアイドルグループになっても、すぐ背後には同系統の姉妹グループが追いかけてくる。「内輪もめ」「仲間割れ」しているヒマは、ない。姉妹グループを作り仮想敵とすることで内輪もめを回避し切磋琢磨していく先行例として、旧制高校制度などを挙げることもできるだろう。

日本的組織の欠点である「内輪もめ」を回避する様々な仕組みを内包したAKBシステムであるが、結成されて10年経つ。当然ながらAKBシステムも、変容していく。


「1つの産業の寿命は30年である」という説がある。これは主に、人材が原因だ。

ある産業が勃興する。はじめの10年は、その産業は海のものとも山のものともわからない。ある意味まだうさんくさいそんな状態の産業には、良い意味でハングリーでギラギラした、あえていえばギャンブラー的要素を持ったエネルギッシュな人材が飛び込んでくる。
次の10年、その産業がある程度大きくなると、安定的成長を求める人材が入ってくる。組織人として振る舞える常識的な人材がその産業に参入する。

さらに次の10年、すでに安定産業となったその分野に就職してくるのは、安定と平穏、その産業のメンバーであることのみを求める冒険を好まない人材だ。その中には、ただその産業に「ぶら下がる」だけの結果になる人材も入ってきてしまう。こうして、1つの産業は30年でその寿命を終える。

AKBシステムという産業はこれからどうなるか、次の10年とその次の10年をどうこなしていくのだろうか。
秋元康は果たして次の一手をどう打つのか、大変に興味深い。よく知らないけれど。

 

 

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