読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

週刊現代『ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない薬』にダマされるな!

勘弁してくれ、週刊現代

ここ数日、たぶん日本中の医者がそう思っているんじゃないだろうか。

今週発売の週刊現代の『ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない薬』という特集のおかげで、定期通院して処方を受けている患者さんが不安をつのらせている。
特集で『医者に出されても飲み続けてはいけない薬』と名指しされているのは、プラビックス(脳梗塞などの予防薬)、ブロプレス、オルメテック、ミカルディス(高血圧の薬)など49種類。病院に定期通院している方なら、その中の1つや2つは必ず飲んでいるようなメジャーな薬ばかり。
だから、定期通院している方なら「この記事は、俺のために警鐘を鳴らしてくれている記事だ!」と思うに違いない。その中の何人かでも週刊現代を購入してくれれば、雑誌のマーケティング的には大成功だ。

 

極論すれば副作用のない薬は、無い。
人体になんらかの影響を与える物質が薬や毒だ。
有益な影響のほうが多ければ薬で、有害な影響のほうが多ければ毒だ。
しかし人体への有益な影響だけしかない物質というのはおそらく存在しない。まるでコインの裏表のように有益な影響と有害な影響は切り離せない。薬の場合、有害な影響が副作用だ。

 

副作用のない物質は「毒にも薬にもならない」。人体に必須な物質、水ですら、大量に飲めば「水中毒」という副作用を起こす。
しかし副作用の発生に気を付けつつうまく薬を使っていくことが人間の知恵で、そこらへんのところを週刊現代の特集は無視している。

 

また、記事では高コレステロール血症の治療薬クレストールは横紋筋融解症を起こすから「飲み続けてはいけない」としている。確かに横紋筋融症は高コレステロール血症の薬の恐ろしい副作用の一つだ。しかし副作用を論じるときには必ずどれくらいの確率で起きるかも考えなければならない。
クレストールの添付文書では、横紋筋融解症の発生確率は0.1%未満となっている。1000人に1人以下の確率だ。そしてその副作用の情報は、隠されることなくオープンになっているものだ。

クレストール以外の高コレステロール血症の薬でも、同じように横紋筋融解症の副作用はあり得る。

 

自動車は一定の割合で事故を起こす。だが、人間の生活をめちゃめちゃ便利にしているのも自動車だ。
一定の割合で副作用を起こす薬と、一定の割合で事故を起こす自動車。
両者とも、まったく利用しないという選択肢は存在する。だがその場合には、薬や自動車を利用して得られるメリットも受けることができない。
細心の注意を払い、副作用や事故のリスクをなるべく避けながら薬や自動車を使いメリットやベネフィットを享受するという選択肢もまた存在するのではないか。

 

薬の使い過ぎに警鐘を鳴らすことには賛成だ。もちろんすべての薬に副作用のリスクはある。
しかし総じて副作用よりも体に対する良い影響のほうが大きいものが薬として成立している。副作用のほうが良い影響よりも多い物質は、薬ではなく毒だ。

週刊現代の特集は、読者の興味を引くことにはおおいに成功した。たぶん売上の数字もよいだろう。
『ダマされるな!』とこの記事は訴える。だがしかし、誰が誰を、何のためにダマすというのだろうか。
もし週刊現代にジャーナリストの矜持というものがあるのならば、次は正確な情報に基づいた、薬を飲むことのメリットとデメリットを冷静に比較した記事にしてほしい。ひたすらセンセーショナルに患者さんの不安をあおりたてるだけの特集では、百害あって一利なしだ。

医療に関する報道でいつも気にかかるのは、例外事象を断りなく一般化して読者の不安や恐怖をあおりたてる手法が使われがちなことだ。
ある薬剤が、副作用が出ることがあるから誰もがみな「飲み続けてはいけない」というのは言い過ぎだ。

それがどれくらい言い過ぎかというと、

「○○新聞は1989年に『サンゴ汚したK・Yってだれだ』という自作自演記事を載せた。だから○○新聞は読み続けてはいけない」という論理や、

「△△新聞社員は2003年に中東の空港に爆弾を持ち込んで現地の人を殺傷した。だから△△新聞は読み続けてはいけない」という論理、

「□□新聞社員は2006年に業務上知りえた情報を使ってインサイダー取引をした。だから□□新聞は読み続けてはいけない」という論理、

「××新聞は2012年に『iPS心筋を移植 初の臨床応用 ハーバード大・日本人研究者 心不全患者に』という大誤報を載せた。だから××新聞は読み続けてはいけない」という論理と同じくらい言い過ぎである。

何度でもいうが、すべての薬に副作用はあり得る。だがだからと言って無条件に「飲み続けてはいけない」というのではなく、「そういうこともあり得るから、薬とは気を付けながら慎重に付き合う」というのが正しい態度なのだ。

 

週刊プレイボーイに取材していただきました!

「薬は飲むな」男性誌キャンペーンで診療不信の患者殺到、病院がパニックに… - 社会 - ニュース|週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト]

 

夕刊フジに取材していただきました!

「医者の薬飲むな」週刊現代掲載で波紋 現場から反発の声「無用な混乱招く」 (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK

 

 

↓病気や薬との正しい付き合い方、マスコミの健康・医療情報の正しい読み方など満載、ダマされたくないかた、必読!

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

 

 関連記事

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp

hirokatz.hateblo.jp