コト広告とモノ広告ーもしも病院の広告規制が撤廃されたら(R)

「広告にはさ、モノ広告とコト広告があるんだよね」
友人Oが言った。
友人Oは元広告マンでバイタリティの塊、縁あって二年ほどルームシェアした。
そんな彼から学んだ数多くのことのひとつが冒頭のセリフである。

 

Oによれば、モノ広告とは商品そのものの性能やグレードに焦点をあてた広告で、クルマのCMだったら「○○馬力」とか「最高時速△△km」とか、商品そのものの特長を前面に出したCMがモノ広告だという。

それに対しコト広告というのは、その商品でどんなコトが起きるのかを描くものだそうだ。
そのとき彼が例に挙げたのはDVDーRのCM。
そのテレビCMは、廃校予定の山奥の小学校の、最後の3日間の日々を画面いっぱいに映していくものであった。

 

やわらかな日差し、校庭の赤い花、壁に貼られた習字、「あと3日でこの学校はなくなりますが、最後まで楽しく過ごしましょう」と朝礼で言うジャージ姿の担任の先生。
屈託のない笑顔でそれを聞く、学年の異なる全校でたった3人の生徒。
そんな姿を写しだし、最後に「いつまでも、色褪せない」という文字とメーカーのロゴ。

DVD-Rがどれくらいの解像度だとかそういったことはまったく触れず、おそらくはそのDVDーRに録画されて何度も何度も何度も繰り返して再生されるであろう物語、
出来事を映し出すそんなCMが、コト広告の代表例なのだとOは言った。

 

それまでなにも考えずにテレビCMを見てきたが、そう教わってからテレビを見ると、ああこれがコト広告か、とわかるようになった。
大きな車にたくさんの子供が乗って山で海で元気に遊ぶワゴン車のCMなんかはコト広告だし、流暢な英語で見事にビジネスを成功させるグローバルなスーパーエリートビジネスマン(胡散臭い響きだ)の姿を描く英会話学校のCMなんかももしかしたらコト広告かもしれない。
うちの英会話学校に通えばこんなコトが起こりますよ、みたいな。

 

病院の場合は広告に規制が多いが、もし仮に規制が緩和されて病院がばんばんテレビCMを出すようになったらどうなるだろうか。
モノ広告だったら「最新鋭のPETやMRI」とか「7対1看護」とかにフォーカスを当てたCMになるだろう。
コト広告だったら「病気で不安だったのに、□□病院に通院して暖かくケアされて病気も治り、笑顔で社会復帰」みたいなストーリーCMになるはずだ。

 

もっとも、もし大阪の病院のCMだったら、
「切ります縫います散らします!!
盲腸ひとすじ五十年。安い早いうまいの三拍子。
ボリューム満点、お値ごろ価格、おんなじ値段で薬は二倍!
××病院は今日も出血大サービス!!
業界屈指のリピート率、天国にもっとも近い場所、××病院!!!」
くらいはやってくれるかもしれない。
(FB2013年7月15日を再掲)

 

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