しつこく週刊現代『医者の薬飲むな!』キャンペーンをウォッチ中。
いつまでこの特集が続くのか知らないが、ずいぶんと反響が大きいそうだからたぶん「緊急出版!医者にダマされるな」とかいって単行本化するつもりなんだろう。
8月のお盆休みあたりは印刷会社もリーズナブルに仕事を受けてくれるそうだから、その時期に一気に印刷・製本して8月末に書店に並べるとなると、本と雑誌の相乗効果を狙って短くとも9月中は週刊現代の『医者の薬飲むな!』キャンペーンは続けるつもりだろうな。ネタ切れにならないか、ひとごとながら心配だ。嘘だけど。
さて、今号で新たに取り上げられたのはステロイドだ。
53ページの見出しには<「万能薬」と言うけれど本当はこんなに危ない「ステロイド」>とあるが、いつの時代の話だろうか。今どきステロイドのことを「万能薬」などという医者に会ったことがないが、医薬分業時代に「医者が薬を出すのは薬を出せば出すほどもうかるから」という認識で記事を書いたり、週刊現代の「医者にダマされるな」特集はいちいち前提条件が時代遅れだ。
ただ記事の中の<ステロイドは精神にもダメージを与える>(p.54)という指摘は非常に大事な話なので確認しておきたい。
今回確認材料としたのは平成20年6月に厚生労働省から発表された『重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤惹起性うつ病』、こちらです↓
http://www.pmda.go.jp/files/000144134.pdf
URLのpmdaは医薬品医療機器総合機構Pharmaceuticals and Medical Devices Agencyの略で、医薬品の副作用の情報を集めたりしている独立行政法人です。
さて、ステロイドによってうつになることがあるのは本当の話だ。
上記文書より重要ポイントを抜き出すと、
・ステロイドの一種プレドニゾロン(商品名プレドニゾロン・プレドニン)の場合、一日40mg以上になるとうつ症状が出やすいとされているが、一日10-20mgでもうつ症状が出る場合もある(p.14)。副作用の出やすさは薬の量によって違う(量によって作用副作用の出方が違うことを用量依存性dose-dependentという)。
・うつ症状を含めた精神症状の出る割合は研究によってだいぶ違い、13~62%(p.17)。結構多いので要注意。
・うつ症状が副作用として出る可能性が高いのは、飲み始めて数日から1,2週間。遅い人だと薬を飲み始めてから3か月以上経ってから出ることもある(p.15)。
・初発症状は眠れなくなった、不安やイライラが出た、やる気がなくなったなど(p.5)。制止型うつより焦燥型うつのほうが多い印象とのこと(p.15)。制止型はなにも考えられないなにもできないといったイメージのうつで、焦燥型は明確な理由や原因なくイライラして何かに追われてるようにアセるという感じのうつである。ステロイドの薬が始まって、なんだかわからないけどイライラしたり不安になったりしたら要注意だ。
ステロイドによる薬剤性うつは稀な副作用ではないが、患者さんの内面の変化なのでわかりにくい。「かわりありません」で診察を済ませてしまえば医者には伝わらずスルーされてしまう。
ここにもまた、おまかせ受診ではいけない理由がある。
病院にかかるときは自分の体と心の変化をじっと見つめ、気づいたことがあれば主治医にストレートに伝えなければいけない。
薬には必ず副作用があるし、黙って座ればぴたりと当たる医者なんてものは基本的にこの世に存在しないのだから。黙って座ればぴたりと当たるなんて場合は、相当に重症なときだけです。
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