しりとり必勝法(R改)

子供のころは今より世の中がもうちょっとゆっくりして、いろいろとヒマつぶしをした。ネットもスマホもないので夏休みには少年ジャンプを何度も読み返したりしてヒマをつぶした。こち亀両さんで大笑いしたり、ファイティングコンピューターの異名を持つロボ超人の冷酷・冷徹・冷血なファイトに戦慄したりした。

それからあまりのヒマさにただひたすらしりとりをしたりもした。

何事もやっているとだんだん上達してくるもので、切磋琢磨の中で知らず知らずのうちにしりとりも強くなっていく。
たとえばこんなふうに。

 

「ほないくで。ん~、しりとり」
「り……、りす!」
「スリ」
「り……、理科」」
「狩り」
「り……、リクエスト」
「鳥」
「り……、りんご」
ゴスロリ
ゴスロリ~!?なんやそれ!!
"り”ばっかりでズルいで!!
ん~、り~り~、り……料理!!どや!!」
「リンゴ売り」
「リンゴ売り~!?そんなんズルいわ。それやったらなんでもありやないか!
だいたいリンゴ売りってなんや。リンゴ売りなんて見たことも聞いたこともないで」
「リンゴ売り、おるやろ、記録的な寒さの冬に、窓の外で声を枯らしてリンゴ売ってる奴や」
「んなアホな。
だいたいな、そんな無茶が通るんやったら、世の中毎日吹雪吹雪、氷の世界や!」
まあそのころはゴスロリもなかったけど。

 

落ち着いて考えれば、「リアリスト」だの「リーゼント」だの"り”のつく言葉はまだまだある。「リーグ戦」や「力道山」や「リアス式海岸」もある。だがとにかく、この"り”攻めをやると敵に精神的動揺を与えることが出来る。
そんなこんなで、しりとりのやりすぎで脊髄反射的に「"り”攻め」がでるようになり、ファイティングしりとりコンピューターと化したぼくは、成長とともにしりとり界を去ることになった。

 

あの殺伐としたしりとりデスマッチから時は流れ、先日息子とひさしぶりにしりとりをしたときに悲劇は起こった。やってもやっても"り”で終わる言葉しか浮かんでこないのである。

息子が仮に”り”で終わる言葉を投げ返してみても、瞬時に「リハビリ」「りょうり」「りゅうきゅうりょうり」と言う言葉が口から飛び出てしまう始末。
みるみるうちに幼い息子の顔は曇りはじめ、ぼくは居たたまれない気持ちでいっぱいになった。その気まづさと言えば、子供とじゃれあっていて反射的にパロスペシャルをくり出してしまったウォーズマンと同レベルだったと思う。

こち亀、終わっちゃうんですってね。
(FB2016年9月2日を加筆再掲)

 

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45