ここ数日、「火傷は冷やしちゃダメ。むしろあたためるのが新常識」なるエセ医学情報がネット上で流通している。批判のためのURL引用をすることで拡散に直接手を貸すのもイヤなので、各自ご検索ください。
発端の自称自然派ママのブログでは、「火傷をしたら冷やしちゃダメ、むしろガスやフライパンで火傷したところをあぶって。熱を加えることで身体の機能が活性化されて治るから」と書かれている。
しかし新常識だろうがなんだろうが、火傷した場合はとにかく流水で冷やしてください。話はそれからだ。
さて、火傷を流水で冷やしていただいたなら話を続けさせてください。
まず、「火傷をしたらあぶって治す」は大間違いだ。
仮に熱したフライパンで火傷をしたとしよう。
普通は「アチっ」かなんか言って手をフライパンから離し、流水ですぐ冷やして応急処置をする。しかしこの「火傷をしたらあぶる」療法だと、熱したフライパンで火傷をしたら、冷やさずに熱したフライパンでその部分をあたためる。
そうするとどうなるか。
単により長い時間、手を熱したフライパンに接しているだけのことだ。治る治らないというより火傷がひどくなるだけ。やめときましょう。
この手の方々にガイドラインだなんだというのも無粋だが、後学のために調べてみる。
日本熱傷学会(世の中にはいろんな学会があるものだ)では火傷した場合には、①すぐ熱源を絶つこと、②水道水や流水で15分から30分冷やす、③火傷の重症度を見極めることを勧めている。
また、2010年のアメリカ心臓学会(American Heart Association)とアメリカ赤十字のコンセンサスでは、火傷したら出来るだけ早く、何としても30分以内に水道水(tap water)で冷やすべしということになっている(Thermal Cutaneous Burnsのところ)。
興味深いことに、このコンセンサスでは、動物実験では氷や氷水で冷やすとかえって身体のダメージが増えた、と書かれている(cooling with ice or ice water increased tissue damages)。AHAでは氷や氷水で冷やすのはお勧めしないそうだ。知らなかった。
http://circ.ahajournals.org/content/122/16_suppl_2/S582.full#SEC3
「火傷はあたためる☆」などの間違ったエセ医学情報を信じてしまう人は後を絶たないが、実はこうした方々というのはいわゆるメシマズな人たちと多くの共通点がある。
メシマズは「(作る)メシがマズい」のネットスラングで、ちょっとマズいとかじゃなく殺人的にマズい人々を指す。
こうしたメシマズ・ピープルのメシがマズい理由には諸説あるが、代表的なメシマズな理由は、
・調べない
・レシピを見ない、無視する
・自己流アレンジを加えたがる
・ナゾのひと手間を加えたがる
・かけた努力の量イコール美味しさだと思っている
・味見をしない
・料理の優先順位が味以外のなにか
だそうだ。
(参考サイト『トイアンナのぐだぐだ』
「メシマズは自分の料理を美味いと思っているのか?」にメシマズの子が答えるよ - トイアンナのぐだぐだ など)
思い当たる節があり過ぎて胸が痛むが、エセ医学信者とメシマズの共通点検証を、勇気を出して続ける。
その1。調べない
メシマズな人々というのは、「大さじ1杯」がどれくらいか、「キツネ色」がどんな色か知らない。が、調べない。
「よく知らないけどこのくらいかな~」というノリでやっちゃう。
エセ医学信者も調べない。「よくわかんないけど火傷はあたためるのが新常識☆だってそのほうがあたしらしいから♡」のノリである。
あまり知られていないことだが、世の中にはインターネットと検索マシンという便利なものがあって、「大さじ1杯」「キツネ色」「火傷の処置」を簡単に調べることができる。知りたいことが瞬時にわかるなんて便利な時代になったものだ。きっとね、これからインターネットって流行ると思うよ。
その2。レシピを見ない
メシマズ・ピープルというのはレシピを見ないか無視する。
何年も何年も修行したその道のプロが知識と経験を注ぎ込んで作ったレシピを軽やかに無視する。
「レシピには○○を200グラムって書いてあるけど、それだと多い気がするからその半分でいいや。代わりにレシピには書いてないけど△△を入れちゃえ。そのほうが身体にいい気がするし」というもんである。○○を減らした根拠は、△△を入れた理由は?
プロが丹精込めて作ったレシピをいとも簡単に無視するんであれば、結果は責任持てない。初心者が、勝手なことをしてはいけない。本当にごめんなさい。
エセ医学信者も、その道何十年のプロの医学者が作り上げた標準的治療法(ガイドラインとかプロトコールとか呼ばれるヤツ)を軽やかに無視する。
無視しちゃいけないとはいわないが、結果は自己責任だ。
その3。自己流アレンジを加えたがる
メシマズな人々というのは、とかく自己流アレンジを加えたがる。
レシピにはないけど××を自己流で入れるとかを平気でする。
レシピにはないけどカレーに□□を入れてみたり☆☆を入れてみたり。我ながら本当に申し訳ないけど『包丁人味平』を子どものころに読んだのがいけなかったと思う。ブラックカレーは強烈だったなー。『ミスター味っ子』のアニメも悪かった。悪気はなかった、ただ「うまいぞー」と味皇に言わせたかったんだ。嗚呼、思い出迷子。
さて、エセ医学信者的な方々も自己流アレンジを加えたがる。「医者から3種類薬もらっているけど、多すぎると思うんで勝手に胃薬だけ飲んでいる」というやつである。
自己流アレンジもいいけど、まずはレシピ通りにやってみるのがメシマズ脱出のコツだという。
(続く)
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