ここ1、2週、週刊ポストでは<「塩分を減らせば血圧が下がる」は間違いだった>特集をやっている。減塩は高血圧治療の第一歩とでもいうもので、<「塩分を減らせば血圧が下がる」は間違いだった>と言われるとほんまかいなと思ってしまう。
ちなみに、高血圧の専門家たちから非薬物治療で推奨されているのは
①減塩(6g/日未満)
②野菜・果物を積極的に摂る
③コレステロールを控える、魚を積極的に食べる
④減量・適正体重の維持
⑤運動
⑥節酒
⑦禁煙
である(高血圧治療ガイドライン2014 第4章)。
実際週刊ポスト特集を読むと見出しこそ過激なものの、中身はそこまで過激ではない。記事の基礎になるのは食塩摂取で血圧が上がる人もいれば上がらない人もいる、という話だ。食塩感受性というもので、そのこと自体はウソではない。
ただ往々にしてこうした細かい話は読者の頭の中に残らない。なんとなく、『塩分減らしても血圧は下がらない』という間違った思い込みだけが残る。正しくは、塩分減らしても血圧が下がりにくい人もいる、です。
週刊ポストの記事をネタに、専門外の情報をどう取り扱うかについて考えてきた。
ネットウォッチャーと読む週刊ポスト <「塩分を減らせば血圧下がる」はやっぱり間違いだった>はやっぱり間違いだったー医療情報リテラシーの鍛え方① - カエル先生・高橋宏和ブログ
エンジェル投資家と読む週刊ポスト <「塩分を減らせば血圧下がる」はやっぱり間違いだった>はやっぱり間違いだったー医療情報リテラシーの鍛え方② - カエル先生・高橋宏和ブログ
インテリジェンス・オフィサーと読む週刊ポスト <「塩分を下げれば血圧下がる」はやっぱり間違いだった>はやっぱり間違いだったー医療情報リテラシーの鍛え方③ - カエル先生・高橋宏和ブログ
端的に言えば、専門外の情報を読むときに、①テキスト内の整合性を問い、テキスト内に矛盾がないか読む、②主張の正反対のテキストを読み、そちらの信ぴょう性を検討する、③多くの人に読まれているテキストの上位3つを読み、その中の多数派に暫定的に従う、という方法であった。
では、あの老人だったら週刊ポストをどう読むか。
あの老人というのはデイル・ドーデン著『仕事は楽しいかね?』(きこ書房2001年)に登場するマックス老人のことである。仕事に悩み、さまざまな自己啓発書で頭がいっぱいになった主人公のビジネスマンを導く、快活で茶目っ気のある、魅力的な人物だ。
もしマックス老人が週刊ポスト<「塩分減らせば血圧下がる」は間違いだった>を読んだらどういうか。
おそらくこう言うだろう。
「面白い!試してみよう!」
『仕事は楽しいかね?』で最も心に残るのは、<人は、変化は大嫌いだが、試してみることは大好きなんだ。>(同書p.89)<『試してみることに失敗はない』>(p.29)というメッセージだ。
週刊ポスト<「塩分減らせば血圧下がる」は間違いだった>をあの老人、マックスと読んだらきっと言うだろう。「ほんとかどうか知りたければ、試してみればいいんだよ」
塩分減らすと血圧が下がるというのがウソだと思ったり、自分に食塩感受性の有無が気になるのであれば、実際に試してみるのが手っ取りばやいはずだ。
そのために面白い方法がある。『渡辺式・反復一週間減塩法』だ。
医者として「減塩してください」と患者さんに勧めても、なかなか実際には難しい。<人は、変化は大嫌い>だからだ。長年慣れ親しんだ塩加減を変えるというのは言うほど簡単ではない。主治医に一言言われたくらいでがらっと患者さんが食生活を変えてくれるというのはなかなかまれだ。「塩分減らしてください」と医者が言っても、かえってくる言葉は「そんなに塩分摂ってないとおもいますけど」の言葉である。
しかし<人は、変化は大嫌いだが、試すのは大好き>でもある。そこを刺激するのが、『渡辺式・反復一週間減塩法』だ。東京女子医大東医療センターの渡辺尚彦教授が提唱しておられる(『一個人』2016年10月号 p.53-59)。
<「学生時代、試験や受験前では誰でも頑張って勉強したはず。それを減塩に置き換えるんです。月に一週間だけ、徹底的に塩分を排除してください。塩味に対する感覚が鋭敏になれば、減塩効果があったと判断していいのです」>(『一個人』p.56-57)
月に一週間だけ減塩することで塩味に敏感になり、結果として普段の食事でもスムーズに減塩できるというものだ。
実際に試してみた。しばらくやってみると確かに今までは気にならなかったラーメンやコンビニおにぎりなどの塩辛さが気になるようになってくる。血圧の記録を取らなかったのが悔やまれる。
高血圧加療中で週刊ポスト記事が気になったかた、まずは反復式一週間減塩法、試してみてくださいませ。