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感情負債仮説ー飲み会翌朝に「死にたくなる」のはなぜか

「飲み会はほどほどで切り上げるようにしてるんです。あまり盛り上がりすぎると翌日死にたくなるから」

ある時、同僚のある医師が言った。

「なんというかね、人間のポジティブな感情の総量は一定で、飲み会とかで盛り上がり過ぎるとそのポジティブな感情を使い切ってしまうんじゃないかな。使い切ってしまうどころか、翌日のポジティブな感情の分まで借金して使ってしまって、それで翌朝どよんとして死にたくなるくらい落ち込むんじゃないかと思うんだよね」

 

前日にポジティブな感情を使い過ぎると翌日つらいという指摘、非常に興味深い考え方だと思う。

睡眠研究の大家であるウィリアム・C・デメントがその著書『ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?』(講談社 2002年)で紹介している<睡眠負債>にあやかり、<感情負債>と呼んでみることにする。

 

睡眠負債は要するに蓄積した睡眠不足のことだ。
<蓄積した睡眠不足のことを「睡眠負債」と呼ぶのは、それがお金の負債と同じで、いつか返済しなければならないからだ。負債額が大きいと、それだけ危険な影響も増大する。また負債がたまりにたまっていると、ほんの少し返済しただけで驚くほど状態が改善されるようだ。基本的に睡眠負債は圧縮できない。つまり、ふだん八時間眠っている人が、ある晩五時間しか眠らなかった場合、次の晩に不足分の三時間を足して十一時間寝ないと、一日を快調に過ごすことはできないのだ。>(上掲書 p.50-51)

 

これと同じように、ポジティブな感情を使い過ぎると翌日返済しなければならないのではないか、というのが感情負債仮説だ。

厳密に証明するにはドパミンだのセロトニンだのの脳内物質をリアルタイムで計測したりしないといけないだろう。そうしたことは今のところ難しいから、感情負債仮説はまだまだ仮説に留まる。

だが飲み会の翌朝のどよんとした気分や、なにか大きな仕事が終わったあとの燃え尽き症候群などの現象は、単なる二日酔いや身体の疲れだけでは説明できない部分がある気がする。そうした飲み会翌朝に「死にたくなる」感じや燃え尽き症候群は、もしかしたらこの感情負債仮説で説明できるかもしれない。

 

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