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ブルゾンちえみとは2017年のトニー谷であるーR-1グランプリを前に。

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「どうも、キャリア・ウーマンです」

ブルゾンちえみを動画で見てから、彼女のことが頭から離れない。

コシノジュンコをリスペクトしたショートボブというよりはおかっぱといいたい髪型と濃いメイク、どこかで見たことがあると思ったらハリウッド映画の中だった。

 

ハリウッド映画ではときどき、妙にビミョーなアジア系の女性が端役で出てくる。

ハリウッド映画に抜擢されるくらいだから美人なんだろうが、日本人の感覚からすると失礼ながらそんなに美人には見えない。日本国内の女性のはやりは多分ゆるかわ・ナチュラルな自然派(と見せかけた超絶技巧派)メイクなんだろうけど、それとは真逆のくっきりはっきりしたアイラインで、小柄というよりちんちくりんな感じのスタイル。

古い映画では『フォレスト・ガンプ/一期一会』で主人公フォレスト・ガンプが軍隊で世話になり、のちにエビの会社を一緒に立ち上げるダン・テイラー中尉が結婚した相手がそんなビミョーなオリジナリティあふれる外見のアジア系女性だった。

「なぜこの人と結婚するかなー」と日本人の観客は思うのだが、話の流れからすると変わった風貌のアジア女性と結婚しちまった!というネタではなく、普通の幸せな結婚という感じで描かれていて、あれはアメリカ人の一部にああいった濃い独特のメイク・小柄なアジア人女性をオリエンタル美人ととらえる趣味があるのだろう。

 

ブルゾンちえみの姿がそうしたハリウッド映画にチョイ役で出てくるビミョーなオリエンタル女性に似ていると思った瞬間、謎が解けた。あれはおそらく、海外帰国子女で外資系に働くキャリア・ウーマンのパロディなのだ。

帰国子女という設定だとすると全て合点が行く。

「クミちゃん、仕事しごと!」「サイトウくん、ありがと」「ウエダくん、ありがと」とやけに名前を呼んでくる感じ、体言止めの多用、「ダメウーマン!」と相手をちょっとけなしそのあとで「それじゃあ質問です」と質問形式で話を進める様子、キメキメのジェスチャーなどなど、あれはアメリカで青春時代を過ごして日本に帰ってきた帰国子女の立ち居振る舞いを戯画化しているのであろう。

 

そう考えたとき、帰国子女のパロディを演じているブルゾンちえみと、それを笑っている我々視聴者との距離感は、戦後のトニー谷と観客のそれにそっくりだ。

トニー谷は戦後、日系二世を演じて一世を風靡したボードヴィリアンである。

「レディース・アンド・ジェントルマン、アンド・おとっつあん・おっかさん」などの日本語混じりの怪しげな英語、「トニー+イングリッシュ=トニングリッシュ」をあやつり、「サイザンス」などなどのキザではなにつく軽口・悪口で人気者となった。

赤塚不二夫のキャラクター、「イヤミ」のモデルになった人物といったほうがイメージしやすいかもしれない。

 

本名は大谷正太郎、トニーの名はアメリカン・レッド・クロス・クラブで働いているときに上司のアメリカ人女性から「トァニィ、トァニィ」と、谷を訛ってよばれたところから谷→トァニィ→トニーとなったという(村松友視トニー谷、ざんす』毎日新聞社1997年 p.64)。
トニー谷は司会者が観客や共演者をイジるスタイルのはしりで、それまで脇役だったMCが人気者になるという、タモリ的な芸風の創始者のひとりであった(小林信彦『日本の喜劇人』新潮文庫 昭和57年 p.90)。

 

トニー谷がウケたのは戦後の米軍占領下の日本だったから、というのが識者の一致した見解だ。子どもの誘拐事件という不幸な出来事があったにせよ、最盛期は昭和26年ころから昭和30年とされる(笹山敬輔『昭和芸人 七人の最期』文春文庫 2016年 p.201)。

この時代、日本は米軍の占領下・占領直後だった。日本からの輸出品に、「Made in Occupied Japan」と記されていた時代で、フクザツ・鬱屈した思いで生きている日本人も多かったはずである。

そんな中、見た目は同じ日本人なのに占領国側、「勝ち組」の一員として振る舞う日系二世は一部で嫌われ者だったようで、トニー谷はそんな嫌われ者の日系二世を徹底的にイヤミに演じることで大人気だった。

 

放送作家景山民夫が後年、もう一度全盛期の芸をテレビでやってほしいとトニーに頼んだとき、トニー谷はいったんはこう断っている。
<「やらねえよ!」

「でも……」と僕は食いさがった。

「僕らは見てないんです。遅く生まれてきちゃったんです。きっと、あの頃のトニーさんの芸を見たがっている人は沢山いると思うんです」

彼はテーブルの上の僕の名刺を手にとって、ちょっと顔から遠ざける仕草をして眺めた。

「景山さん……ね。いいかい、あちしが二世みたいな喋りをやったのは町に二世が一杯いたからだよ。アーニーパイル劇場はアメリカの芸人が出てて客席も全部アメリカ人。劇場の表を歩いてる日本人にゃそれが見られない。だけど、同じ顔をした二世は、アメリカ人で、いくらでも劇場に出入り出来た。そういう時代だったんだよ。どっちかってェと二世ってのは、キザだのなんだの嫌われてる時代だったんだ。だからあちしのやったことに意味があった。ウケた。“レディース・アンド・ジェントルメン・アンド・おとっつぁん、おっかさん……”がウケたんだ。パロディーってのはそういうものなんだ。それを、今、この時代にやったって何の意味もありゃしない。そうだろ?」>(景山民夫『普通の生活』角川文庫 昭和63年 p211-212. 「トニー谷ディナージャケット」)

 

トニー谷が占領下の日本で日系二世を演じて観客のコンプレックスと嫌われ者見たさに基づく笑いを引き起こしたとすると、ブルゾンちえみの笑いは何に由来するものか。

格差と二極化に翻弄される2017年において、いわゆる「勝ち組」ポジションの帰国子女・外資系キャリアウーマンを演じ、言ってる雰囲気やジェスチャーはキメキメなのにたとえが少しだけずれていたり(人気アイドルが遊ぶ時間が無いのとキリンの睡眠時間はよく考えると関係ない)、「イケてる女」気取りなのに見た目が微妙(文字通り微妙で、美人ではないが崩れすぎてもいない)なところのギャップが笑いの源泉なのだろう。
「かっこつけてそんなこと言ったってアンタ微妙じゃん」という笑いなのだと推測する。


そうした意味で横にいる「B」、ブリリアンの二人が超・効いているともいえる。

イケメンで182cmの長身の二人を両脇に配することでブルゾンちえみの「ちんちくりんさ」(そうは言っても155cmあるそうだ)と見た目の微妙さが引き立つ。
もし江角マキコwith Bが同じネタをやってもただの『ショムニ』だし、クールビューティなハリウッド女優が「地球上に男は何人いると思う?35億」と言っても「ははー、恐れ入りました」となるだけで笑いにはつながらない。

ギャップがあるから面白く、そのギャップの演出にブリリアンの存在は不可欠だ。
2月28日放送のR-1ではブルゾンちえみはBなしで戦うという。どこまで戦えるか大注目である。

 

何で延々とこんなことを書いてるかって?
Ha! ダメネットサーファー。

それじゃあ質問です…(以下、お好きな文章をお入れください)

 

 

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