詐欺師の生産性ーamazon マーケットプレイスで詐欺が横行中

  

弁護士ドットコムニュースによれば、ここのところamazonマーケットプレイスで詐欺が横行しているという。

Amazonマーケットプレイスで「詐欺業者」横行…商品届かず、個人情報漏れる恐れ - 弁護士ドットコム

プロジェクターなど数万円する商品に1円など通常より格安の値段をつけて出品し、代金をだまし取るほか注文した人の個人情報も盗みとるという手法で、盗みとった個人情報は別の詐欺に使われるらしい。

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こうした詐欺では、通常ではあり得ない安さの値段がついていたり、今まで出品経験のないにも関わらず同じタイミングで大量出品されていたりと明らかに「怪しい」ものも多い。

振り込め詐欺なんかもそうだが、よく見ればあからさまに「怪しい」設定の詐欺が多いのはなぜだろうか。「こんなのに引っかかるほうも引っかかるほうだよなあ」と思わせるような稚拙な詐欺があとをたたないのには詐欺師側からすればわけがある。

詐欺の生産性を高めるためだ。

生産性とは、利益/コストだ。

生産性を高めようとすれば、利益を増やすかコストを下げるか両方かしか方法はない。

 

伊賀泰代『生産性』(ダイヤモンド社 2017年)の序章で、新人採用の生産性向上の話が出てくる。

同書によれば、会社が10人の人を採用しようとしたときに1000人も2000人も応募が殺到するようでは生産性が低いという。

必要とされるスキルや能力を持った10人の人材が欲しいのに、基準に満たない有象無象が応募してきたら告知コストや選抜コストがかかる。だから、基準を満たす適正人材10人だけが応募してくるような採用方法がもっとも生産性が高い(コストが低い)理想の採用なのだそうだ。

 

詐欺師の生産性の話にもどる。

プロの詐欺師にとって、一定の割合で詐欺が発覚してつかまるというのは想定されるコストに含まれる。プロ詐欺師にとってはできるだけつかまらないほうがコストが下げられ、生産性があがるわけだ。

できるだけつかまらないようにするにはどうするか。

優良なカモだけがひっかかるように詐欺を設定するのだ。

優良なカモというのは平たく言えば「だまされやすい人」、「だまされても気づかない人」、「だまされたと気付いても警察に通報しない人」だ。

 

だまされやすい人、だまされても気づかない人、だまされたと気付いても警察に通報しない人、だけを選抜して詐欺にひっかけるにはどうするか。

一番最初から、だまされやすい人たちだけがひっかかるような設定で詐欺を行えばよい。

おかしな文章や相場からかけ離れた値段設定、中国やロシアといった発送元などをそのままにしておけば、優良カモじゃない人たち、すなわち注意深く、もし被害にあったらすぐ通報しそうな人たちはアプライしてこない。だまされやすい優良なカモだけがひっかかって、最後まで(詐欺師にとっての)トラブルなく詐欺が完走できるわけである。

(参考文献 瀧本哲史『戦略がすべて』新潮新書 2015年 p.137-138。注1)

 

だから、生産性の高い詐欺はむしろあからさまに怪しい。

あからさまに怪しいままにしておいて優良なカモをひっかけるのが彼らの手口なので、「常識的に考えて、そんなうまい話があるわけはない」と思うような話には近寄らなければ詐欺にあわずに済む。
詐欺を見破る方法はいろいろある。実をいうとぼくは見破る方法を完全に身につけたので金輪際詐欺にひっかかることはない。本来ならば詐欺を見破るその方法を逐一ここに書き記したいのだが残念ながらその時間はない。

なにしろこれから、最近知り合った「油田の権利を分けてあげる」という親切なナイジェリア人にぼくの銀行の口座番号をメールしなければならないのだ。

 
注1)スティーブン・レヴィット、スティーブン・ダブナー『0ベース思考』p.205-も参考になる。2019年1月付記
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