まずは居酒屋にいると思っていただきたい。
ビールの1,2杯でも飲んで軟骨揚げでも食べて、そのあとハイボールも飲んでいる間に店員がサラダの皿を下げに来て、ちょっと焼うどんとか食べたいとか言いだすヤツがいるくらいのタイミングだと思っていただけるとありがたい。
エビデンスとか科学的合理性とか、人によってはポリティカル・コレクトネスとかがどっかに行き始めたくらいのアルコール血中濃度だと思っていただけるとなお助かる。
誰かがこう切り出す。
「それにしてもどうして男/女ってさー」。
それくらいのレベル感の話。
すいぶん前にスポーツ新聞で読んで、その後の人生に結構影響を与えていることがある。スポーツ新聞なので読者の大半は男性で、こんな話だ。
仲のよい女性がいるとする。彼女でも奥さんでもいいけれど、常日頃からちょっとしたことを助けてくれたり、ちょこちょこと何かしてくれたりする。
あなたがもしお礼やお返しをしたいと思ったとき、「いつもお世話になっているから」と、どかんと大きくお礼をしようとしてはいけない。
最高級のお店のディナーや宝飾品などのプレゼントで何万円を費やしたとしても、あなたは「いつもお世話になっているぶん、これでお返しができた、これでチャラだ」と思ってはいけない。
なぜなら、女性は10回も20回もあなたのことをケアしているにも関わらず、あなたは1回だけしかお返しをしていないから。女性にとって、1回は1回。総額何万円のお礼を1回しただけでは、イーブンにならないのだ。
人間関係のお礼やプレゼントのやり取りにおいて、男は総額でいくら使ったかで評価しあうが、女は回数・個数やどれくらい頻繁かで評価しあう。「男は総額 女は個数」なのだ。
こんな話を読んで、改めて周りを見回してみると妙に納得できることに気づいた。
昔から、「色男よりマメ男」というように、マメな男というのはよくモテる。
思いのこもったラブレターを便箋何枚にもつづっていきなり送りつける男より、「元気?」とか「何してる?」とか何にもなくてもちょこちょこメールや声かけしてくる男のほうがモテる。年に1回、十万円もするプレゼントをする男よりも、毎回毎回ちょっとしたスイーツを差し入れてくる男のほうがモテる。
この歳になるとわかるが、前者は重たすぎるし、ちょっと怖い。だが、男は、若いうちはこのことに気づかない者が多い。気づいた少数者はモテてますな。
「男は総額 女は個数」で評価するのはなぜか。
冒頭に戻って、居酒屋でほろ酔い程度の話であることを思い出していただきたい。ポリティカル・コレクトネス、通称ポリコレ棒はいったんわきに置いて、「酔っぱらいの言うことはしょーがねーなー」くらいの感じで聞いていただければ幸いだ。
居酒屋談義レベルで言えば、その昔、男は狩りに出てマンモスを狩り、女はムラで家事と子育てをした。
男はヤリで一撃必殺で大きなマンモスを仕留める必要があったから、一点に集中し、できるだけ大きな成果を上げることに長けるよう進化した。大きな成果=総額、が男にとっての評価基準となった。
女はたくさんの乳飲み子をいっぺんに面倒みなければならないから、同時にいろんなことをこなすことに習熟し、いくつのタスクがあるか把握するのがクセになった。すなわち、何人の乳飲み子がいるか、個数が女にとって一番大事なことになった。
その進化の果てに我々がいて、だから「男は総額 女は個数」で評価しあうのである。…イタタ、居酒屋談義だからポリコレ棒でポカポカ殴るのはやめてください。
「男は総額 女は個数」仮説はなかなかイケるんじゃないかと思うのは、夫婦の家事分担のトラブルのときだ。
夫が「俺はこれだけ稼いできている(=総額)」と言えば、妻は「あたしは洗濯や料理、子どもの送り迎えに掃除とかたくさんいろんなことをしてる(=個数)」と返す。前提となっている評価基準が違うのもあって、話はすれ違う。こじれればこじれるほど、「掃除とかいってもそんなに量もないじゃん(=総量)」「あなたは仕事だけしてればいいからいいわよね(=個数)」と互いの非難の応酬となる。
そんなとき、「男は総額 女は個数」仮説を思い出して、互いの評価基準が違うせいで話がかみ合わないのかもしれないと冷静になっていただければ嬉しい。
ま、つまりあれですよ、なにが言いたいかっていうと矢野顕子ですよ。
ほらあるじゃない、あれだよあれ、なんだっけ、えーっと…そうそう、こういう歌詞。
<男もつらいけど 女もつらいのよ
友達になれたらいいのに
くたびれる毎日 話がしたいから
想いきり大きな字の手紙 読んでね>
えーっとなんだっけ。結構飲んだねー。
…すみませーん、お勘定!
あー、『ラーメンたべたい』。
上原ひろみすごいなー。