2020-01-01から1年間の記事一覧
誰にでも何にでも、原体験はある。僕にとって日本の仕事のやり方の原体験は、とある大晦日の大学病院だった。 1999年12月31日。研修医だった僕らに指示が下った。「何かあったらいけないから、当科の研修医は今日は全員、病院に泊まり込むように」それぞれの…
通勤電車の中で、唐突に筒井康隆の短編を思い出す。毎日戦場に電車通勤するサラリーマン兵士の話。戦争という非日常と、電車通勤や満員電車やサラリーマンという日常の取り合わせが妙な味わいの話だった。あのサラリーマン兵士氏も、戦場から帰宅したら子ど…
「すべてがうまくいかないとき、やるべきことは3つ。知識、健康、人脈をつくる、です」 ジャニーズ事務所出身で、今はニューヨークで経営者をしているという板越ジョージ氏が以前にインタビューで語っていた。https://news.yahoo.co.jp/byl…/satoutomoko/201…
中條医院に風評被害が発生しました。 「院長がコロナになったらしい」などと事実無根のデマを地域で吹聴している人がいるので、信用毀損罪として地元の船橋東署に相談しています。現在、調査していただいているところです。 事実無根のデマは社会の治安を乱…
「緊急事態宣言」はコロナウイルスを瞬殺できる必殺技でもなんでもない。宣言が出た瞬間に感染者が激減するわけでもなく、宣言が出てから1〜2週間くらいでやっと成果が出始める。宣言出た瞬間に感染者が激減したらどんなによいか。 緊急事態宣言が出ても出な…
「まずは、本業をがんばる、やね」Tさんが言った。Tさんは外科医で、掛け値なしに日本のトップクラスの一人だ。ぼくも運営に関わっているとある法人の創始者で、法人の活動方針を話しあっていたときのことだった。 本業のかたわら何か新しい活動を始めると、…
自分では泳がないのにプールサイドからああだこうだとアドバイスを飛ばす人を山本七平は「プールサイダー」と呼んだ。浮世を泳げば、前後左右上下にななめ上のあちこちから玉石混交さまざまなアドバイスが飛んでくる。プールのなかのわれわれは、果たしてそ…
ひとり身で仕事上の責任も無ければ1か月くらい家に閉じこもってYoutubeみたり『ロッキー』や『スターウォーズ』なんかをアマゾンプライムでみてじっとしていたいけど、家族もいるし仕事上の責任もあるし、しかたないからマスクして満員電車をできるだけ避け…
社会不安をあおることはあんまり言いたくないけど、「医療崩壊」ってドカンと突然くるパターンじゃなくて、じわじわとくるパターンもあるんです。 今、どこの病院も予定手術は延期、予定検査も延期、できるだけ受診しないでって言っているということは、後者…
「タカハシさんぼくね、花屋とかいいなって思うんすよ」呼吸器内科のY君が言った。今からずいぶん前、新型のウイルスが出現して世界の有り様を完全に変えてしまう前のことだ。 「ぼくら医者の仕事って、マイナスをいかにゼロに戻せるかって話じゃないすか。…
志村けん氏が亡くなられたとのこと。 医療者とそうじゃない人との認識ギャップがあるのはやむを得ないが、おそらく医療者の感覚では ・「肺炎で人工呼吸器が必要」=命をつなぐことはできる可能性があるが、社会復帰できないくらいの後遺症が残るかもしれな…
「プールサイダー」という言葉がある。自分では泳げないのに、プールサイドからプールの中の人の泳ぎをああだこうだと言い、なぜもっとこうしないのかと批判したりする人のことだ。イザヤ・ベンダザンこと山本七平氏が作った言葉で、氏の著書『日本人とユダ…
「グローバリストはそのうち絶滅種になるかもしれない」とブルームバーグ(2020年3月16日配信)。 グローバリズムがよって立つリカードの「比較優位」「自由貿易」の話は、完全雇用を前提とし、各国の発展度のちがいや政治的要素を勘定に入れていない(物理…
ここのところ、バイアスについて考えている。 www.hirokatz.jp www.hirokatz.jp 人は誰も、バイアスから自由にはなれない。バイアスは、人間が危険を察知し瞬時に判断して行動するために発達したものだ。だからバイアスが常に悪者とは限らないし、もし我々が…
〈(略)瞬時に何かを判断する本能と、ドラマチックな物語を求める本能が、「ドラマチックすぎる世界の見方」と、世界についての誤解を生んでいる。〉(ハンス・ロスリング他『ファクトフルネス』日経BP p.23) バイアスの話。テラスと美食をこよなく愛する…
「目の前の模擬患者さんが南極観測隊に行くとして、シミュレーション問診してください。では、はじめ!」ずいぶん前に参加した、医者向けのとあるワークショップでの光景である。誰かを不用意に批判する意図は無いので、少し状況を変えて書く。 ワークショッ…
新型コロナウイルス騒動で改めて痛感するのが、インチキ情報・嘘情報がこんなにも出回るのか、ということである。 たまたま自分の専門分野だから気付くというのは大きいが、こうしたインチキ情報・嘘情報にだまされないようにするにはどうしたらよいか。 凶…
新型コロナウイルスが怖くないとは言わないが、新型コロナウイルスに対する社会不安のほうがもっと怖い。社会不安が強ければ消費が冷え込み経済は縮小し人心が乱れる。社会不安が強いか弱いかを可視化するため「マスクindex」というのを考えてみた。 通勤電…
新型コロナウイルスに関し、さまざまな言説が飛びかっている。頭を整理するために、いくつかに分けて考える必要がある。複雑な事情は単純なものに切り分けて扱え、というのはデカルト以来の鉄則だ。 新型コロナウイルスに関して①一人の個人についての医学的…
「まあでも結局、自分が好きで始めたことだからな」ココロのバランスを取る、魔法の言葉である。 生きているといろんなことがある。良かれと思って始めたことも、思わぬ批判に苦しむこともある。みんなのためにこんなに頑張ってるのに、誰もわかってくれない…
新型コロナウイルスに対する社会不安による社会変容について考える。この話は大仏とピラミッドを目指して駆け足で進んでゆく。 ジャレド・ダイヤモンドは著書『鉄・病原菌・銃』の中で、ヨーロッパ人が世界を征服できた理由の一つとして病原菌をあげた。ヨー…
新型コロナウイルス肺炎はいつ落ちつくのだろうかと考えてみる。正確に言うと、新型コロナウイルス肺炎への社会不安がいつ落ちつくのか、ということを推定してみる。 社会不安が落ちつくためには、どこかしらが収束宣言を出すことが必要となる。医学的現象と…
感染症とは、ウイルスや細菌と人間の綱引きです。ウイルスや細菌の力が強くて、 ウイルスや細菌>体力 の場合、人間が負けます。負けたら死にます。 人間の体力が強くて、 ウイルスや細菌<体力 の場合、人間が勝ちます。勝つと治ります。 人間は薬などの武…
「役所というのはね、『前例、条例、予算』で動くんです」西日本のとある市の市長だったKさんが言った。K市長(元市長だが、呼びやすい肩書きで書く)は地域の名士として長年地域づくりに取り組み、その後市長を務めた。地域づくりでの役所とのやりとりの中…
岩田先生の言ってることはわかるが、やり方がエキセントリックだという批判をする人は、グレタさんのときも言ってることはわかるがやり方がエキセントリックだと批判したのだろうか。あるいはグレタさんは手放しで絶賛して岩田先生には「あのやりかたはちょ…
発言や行動に対する批判を、人格に対する攻撃として捉える傾向がアジア人には比較的強い、という話を聞いたことがある。東大からロッテに入団し、その後コロンビア大学でMBAとった小林至氏が書いていたような、あるいはそれこそ岩田健太郎先生が書いていたか…
〈「おかげさまで数十年間、大過なく仕事をしてこられまして、本日、無事に退職となりました」とある官僚の退職パーティでの挨拶を聞いて、リスクを回避し、減点を避ける我が国の役人の傾向を痛感した。リスクをとりにいく人物なら、「大過なく」などと言わ…
現代社会の主流文化を「常にハッピーであれ」「常に自分らしくあれ」「常に成長せよ」という同調圧力の強い、『アゲアゲ・ポジティブ・アッパー文化』ではないかと仮置きしていろいろ夢想している。いつか誰かが学術的に論考してくれることを祈りつつ、つら…
www.hirokatz.jp 「no one is happy all the time. And that’s OK/いつもハッピーな人なんていやしない。そして、それでいいんだ」2019年にバーガーキングが打った広告のことを知ってから、ふわっとしたとりとめのないことを考えている。いったいどこで潮目…
縦読み広告で話題のバーガーキングは、2019年にアメリカで「アンハッピー・セット」を売り出したという。もちろん、ゴールデンゲート、ビッグMの「ハッピー・セット」への皮肉である。「アンハッピー・セット」のキャッチコピーがとても良い。「いつもハッピ…