3分診療でどこまでできるか・番外編『下痢のときは、止めない』

3分診療のままでよいとは思わない。それでもなお、できることがある。

これからの季節は、「おなかに来る風邪」の季節でもある。

「下痢止め処方してください」といって病院を受診するかたもおられると思うが、十中八九、医者からかえってくる言葉は「下痢は止めないほうがいいんですよ」だ。
下痢や嘔吐というのは体の中に入った悪いもの(細菌とか)を外に出そうというからだの働きだ。
だから無理やり下痢どめで下痢をとめたり、吐き気どめで嘔吐をとめてしまうと、体の中に悪いものがとどまってしまうことになる。そんな理由から「下痢は止めないほうがいいんですよ」と言われるわけである。

医学的な言い回しだと<下痢・嘔吐は一般的に消化管感染に対する生理的反応であるので基本的に制吐薬、止痢薬の使用は避ける。>(青木眞『レジデントのための感染症診療マニュアル』p.277。言うまでもないほどの名著で、はじめの7、8ページ読むためだけでも買う価値がある本)となる。

「下痢がひどいんです」という話で病院を受診した場合、そういうわけで強い下痢止めなどは処方されないと思っていただいてよい。
処方されるのはたいていの場合、整腸剤と胃薬くらいだろうか。
整腸剤でビッグ・ネームはビオフェルミンで、主成分は乳酸菌だ。ちなみに抗生剤と処方される場合にはビオフェルミンRが処方される。このRはresistanceのRで、抗生物質に耐えられますよ、という意味だそうだ。
病院で処方される整腸剤の主成分は乳酸菌で、これはおなかの中に大量の乳酸菌を送りこむことで悪玉の細菌を相対的少数派に追い込むために飲むのだと思う。
要は乳酸菌などの善玉の菌を大量に腸内に取り込めればよいので、石川雅之のマンガ『もやしもん』ではおなかをこわしたときにヨーグルトをバカ食いする描写があった。
なるほど理にかなっていると思って一回だけマネしたことがある。効いた気がした。

そんなわけでこれからの季節、「おなかに来る風邪」を引いたときには病院に行く前にヨーグルトを大量に食べてみるのもいいかもしれませんね(web記事風文末)

 

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

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