3分診療でどこまでできるか・番外編『急性アル中は救急室でどう治療されるか』

3分診療のままでよいとは思わない。それでもなお、できることがある。

クリスマスに忘年会、新年会とお酒を飲む機会が増える時期だ。この時期に病院の当直をしているとよくお会いするのが、急性アルコール中毒の方々である。
どういうわけか、日本は、アルコールに甘い国だ。

世界的には、「酒の上のあやまち」とか「あのときは酔っていたから」とかいう言い訳が成立する国は珍しい。もちろん、他国にも酔っぱらって前後不覚になる人たちはたくさんいて、東の横綱エリツィン元ロシア大統領である。

その昔、知人のカナダ人とその仲間たちと飲んだことがある。彼らのタチの悪いところは酒に酔っても顔に出ないことだ。
みんなでぐいぐい飲みながら、さすが外人は酒に強いなーと感心しているうちに次第にカナダ人グループの行動が粗暴になってきた。バーのカウンターの中に入り込んで騒いだり、バーテンダーに酒を安くしろとからんだり。せっかく知り合いのバーに連れていったのに散々であった。
後日知人のカナダ人に苦情を言ったら、バツの悪そうな顔で、「あれはジョークだったんだよ」と言い訳をした。なるほど外人は「酒のせいだ」という言い訳はしないのだと妙に感心したものだ。

閑話休題

厚生労働省のサイト(①)によれば、アルコールが体に与える影響は以下のようなものだ。

 

//////////////(以下引用)////////////////////////////////////////////////////////////

  1. 爽快期(血中アルコール濃度20~40mg/dl)
    症状:陽気になる、皮膚が赤くなる
  2. ほろ酔い期(血中アルコール濃度50~100mg/dl)
    症状:ほろ酔い気分、手の動きが活発になる
  3. 酩酊初期(血中アルコール濃度110~150mg/dl)
    症状:気が大きくなる、立てばふらつく
  4. 酩酊極期(血中アルコール濃度160~300mg/dl)
    症状:何度も同じことをしゃべる、千鳥足
  5. 泥酔期(血中アルコール濃度310~400mg/dl)
    症状:意識がはっきりしない、立てない
  6. 昏睡期(血中アルコール濃度410mg/dl以上)
    症状:揺り起こしても起きない、呼吸抑制から死亡に至る

////////////////////// (引用ここまで)////////////////////////////////////

病院の救急室に運ばれてくるのは5の泥酔期や6の昏睡期の方々である。
連れてきてくれる友人知人もたいてい3や4の酩酊初期や酩酊極期の状態なので、急性アル中のかたが救急室にやってくるとちょっとした大騒ぎになる。
酩酊極期の友人が「急性アル中に効く薬とかないんすか?!」とスタッフに喰ってかかったりするが、そんなものは無い。急性アル中の人が救急室で受ける治療は、ひたすら血中アルコール濃度を下げるだけである。
救急室では次から次へと点滴をして、アルコール分を薄める。早めに点滴が血液の中に入るように、いつもより太くて痛い針の点滴を両手に刺されることもある。

点滴=水分が体に入ると当然、尿も作られる。意識がもうろうとしているとトイレにいけないので、下手したらオムツをされたり、失禁しないように膀胱に管を入れられたりするかもしれない。社会人としては出来れば避けたい事態で、一言で言えば「失態」である(特殊な趣味のかたは除く)。

今晩も日本のあちこちの救急室で、急性アル中の治療が行われている。救急室に行くのを避けたければ、水やスポーツドリンクなどをしっかり飲んでアルコールを薄め、血中アルコール濃度を上げ過ぎないことが秘訣だ。

年末年始、血中アルコール濃度を上げる場合には、どうか40~50mg/dl程度までにしておいていただければと思う。それ以上血中アルコール濃度を上げる場合には、上記の光景を思い浮かべながら飲んでいただければ幸いである。
本心から申し上げるのだが、どうかみなさま素敵なクリスマスを。

 

① 

http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-020.html

 

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

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