3分診療のままでいいとは思わない。それでもなお、できることがある。
「最近なんとなく調子が悪いんですよね」
診察室で患者さんが言う。
「最近っていつからですか?」
医者が尋ねる。
毎日日本中で繰り返されているやりとりである。
病気の診断において、時間的経過というのはめちゃめちゃ大切なファクターだ。
著者の専門分野の一つ、頭痛を例にとると、
数分前に突然起こった最悪に強い頭痛の場合には血管の病気を考える。くも膜下出血など超危険な頭痛も含まれる。血管の病気は、血管がつまったり破裂するまではなんともなく、つまったり破裂したりする瞬間に起こる。患者さんが「突然、最悪の頭痛がおそってきて」と言えば、世界中の医者が「くも膜下出血かも」と思う。
血管の病気が突発的に起こるのに対し、数か月といった単位で進行する病気には腫瘍がある。なにもないところから数分で完成する腫瘍はなく、腫瘍ならば数か月単位で大きくなってゆく。だから脳腫瘍による頭痛ならば「数か月まえから徐々に頭痛が強まってきた」という話になる。
一番多い頭痛は緊張型頭痛で、「しめつけられる」「頭が重い」などの症状が出てくる。こうした頭痛は何年も前から繰り返し出てくることが多く、「二、三年前からの頭痛」と聞けばこの緊張型頭痛か片頭痛かなと医者の頭が働く。
「最近なんとなく調子が悪い」という伝え方では、その「最近」が昨日からなのか数か月前からなのか数年前かわからない。いつからなのかが具体的にわかるだけで、医者が想定する病気はぐんと絞られていく。
だから医者に症状を伝えるときには「最近」ではなく、「○年前から」とか「何月から」とか「11月6日から」とか分かる範囲で具体的に症状がはじまった時期を告げるのが大正解なのだ。
そんなわけで、11月6日から『3分診療時代の長生きできる受診のコツ45』、発売です!!