ニュース『鎧塚氏 なお美さんの高額民間療法言及』に思う

ネットのニュースによれば、9月に亡くなった川島なお美さんの夫、鎧塚俊彦氏が彼女の症状について述べた医師と民間療法師についてこんなことを書いているという。

www.daily.co.jp

<まず、「とある大病院の医師による『どうみても負け戦です。後はどう敗戦処理を考えるかだけです』という人間味の全くない冷たい見解」と、配慮のない医師の冷酷な宣告に傷付いたことを明かした。

 そして「ある民間医療の『必ず治りますから希望をもって諦めずに治癒をしましょう』と言って高額な治療を勧めてくる一見人間味溢れる医師」と、夫妻に勇気を与えてくれはしたが、高額請求にその金儲けの真意が表れていた療法師…。

改めて2人を比べてみて、鎧塚氏は「藁をもすがる患者とその旦那にとってどちらが名医でどちらが藪医者だったのでしょうか?」と自問自答しながら、「私には今となっても結論は見いだせません」と迷い続ける心中を明かした。>
( < >内は引用)

わらをもつかむ思いで民間療法に頼る患者さんは古今東西あとを絶たない。
そんな弱みにつけこんで、効きもしないもので大金を巻き上げ安穏としている業者には天罰が下ればよいと思う。
それを大前提として、しかし脳裡に浮かぶのはこんな言葉だ。

<世界中のどこで行われた調査でも、代替医療を使うきっかけの少なくとも一部は、通常医療への失望であることが示されている。医師たちは、診断を下し、適切な治療をするという点では立派な仕事をしているのだろうが、「良い医師」であるための条件として、診断や治療の的確さと同じぐらい重要な資質が欠けていると感じている患者は多い。調査によると、患者は、医師は自分のためにろくに時間を割いてくれず、思いやりも共感もないと感じている。それに対して、代替医療を受けている患者は、自分のために時間をかけ、理解と共感を示してくれることをセラピストに求め、セラピストはおおむねそれに応えていることがわかる。ある意味では、医師のなかには、患者に対する思いやりを代替医療の施術者に委託している者がいるのだ。>(サイモン・シン&エツァート・エルンスト『代替医療のトリック』新潮社 2010年 p.349-350)

 

インチキな民間療法で大金を巻き上げる業者が最も罪が重い。
弱った心でそういったものにすがらざるを得ない患者さんを見ると切ない。
悲しいかな、食い物にされる患者さんはこれからも出てくるであろう。
自己責任、自業自得と突き放すこともできるのかもしれない。
しかしそういった被害者を一人でも減らすために、オーソドックスな医師がもっと出来ることもまだあると、上掲書『代替医療のトリック』は静かに問いかけている。