しつこくしつこく『9勝6敗』戦略の話。
「あいつさあ、許せないよな。
当選初回で俺より当選回数少ないくせに、いつも俺より先にエレベーター乗るんだぜ」
とあるベテラン議員の人がぼそっと言った。
人間にはそういうところが、ある。
勝ち抜けを許さない賭場でこっそり9勝6敗をコンスタントに続ける方法を論じている。コンスタントに、というのが重要で、運否天賦、結果的にの9勝6敗ではなく、狙って9勝6敗をキープする方法である。
賭場も人生も、勝ち星負け星が最終的に「ほぼ」均衡、プラマイゼロに収束するならば、小さな星はバラまいておく。
冒頭の当選初回議員氏も、エレベーターに先に乗り込むなんて小さい星は積極的にバラまいておくべきだ。
ベテラン議員氏とエレベーターに乗る羽目になったら、「どうぞどうぞ、先輩からお乗りください」と言ってエレベーター一番乗りという勝ち星を押し付けてしまう。
ベテラン議員氏に「いえいえセンセイから。議員は対等ですから」と星を返されそうになったら、「何言ってるんですか、人生の大先輩ですから。どうぞどうぞ」と言ってエレベーターに先に乗せつつ、小さな星を押し返す。
勝負どころの大金星のために、ふだんから小さな勝ち星はまわりにバラまいておくのが肝要だ。
ほかの人をエレベーターに先に乗せるために「どうぞどうぞ」と言うなんてなんて小さい話だと思うだろうが、こういう日々の小さい勝ち星のバラまきというのは人間界においてかなり重要だ。芸能界には、「どうぞどうぞ」と言い続けてついに頂点を極めた伝説の三人組がいるという。
(続く)