色川武大『9勝6敗』戦略考(その11)

夏の終わりに『9勝6敗』考。

 

友人Tから教えてもらった色川武大氏の『うらおもて人生録』(新潮文庫)、特にその中の『9勝6敗』戦略についてつらつら考えた夏であった。
ほんとは「なんだかんだで15回に渡り書いてきた。うまく書けた話もそうでない話もあったが、なんとか9勝6敗、勝ち越して終われれば幸いである」と締めたかったがそろそろネタ切れだ。

 

『うらおもて人生録』にはほかにも惹きつけられる言葉やフレーズがいくつもある。
一つの失点が次の勝ちにつながるのを、勝負ごとでは『打ち返し』というとか(p.168)、生きていくには魅力を高めなきゃいけない、〈魅力ということは、自分が生きているということを、大勢の人が、なんとか許してくれる、というようなことだ〉とか(p.183)。
勝ち逃げを許さぬ賭場から生還した人の言葉というのは、凄みがある。

 

賭場も人生も、勝ち星負け星が「ほぼ」とんとんの相星に収束するよう出来ているのではないか、そしてその中でなんとか勝ち越し、あわよくば9勝6敗で勝ち逃げできないか、という話を一夏書いてきた。
そんな中で気づいたことがある。至極当たり前のことだ。

 

9勝6敗で勝ち越すには、15戦しなければならない。全勝するにも、8勝7敗するにも、7勝8敗で負け越すにも、そして15敗するのだって、15戦しなければならない。
みんな、戦い続けているだけで十分えらい。
しょっぱい勝負もギリギリの勝ち星も、力及ばず土がついたって、それでも土俵に上がり続けるだけで、ほんとだったら歴史の教科書に載るくらい立派だ。

 

TGIF.Thanks God, It's Friday.
一週間戦い続けた皆様に祝福を。
それじゃまた。

 

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