色川武大『9勝6敗』戦略考(その4)

色川武大氏の著書『うらおもて人生録』に出てくる『9勝6敗戦略』について考えている。

 

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15戦15勝を無限に続けていくのは無理だ、むしろ恐れるべきはあえて9勝6敗を狙いにきている人で、こういう人はなかなか崩れない、という、賭場での観察に基づくのが『9勝6敗戦略』である。

 

『9勝6敗戦略』とはつまるところ小さな負け星を集め大きな勝ち星を拾いにいけ、というところだ。
個人的な実践法として、「平穏な生存のために複数の小集団に属しておく」というものがある。

 

個人も集団も生存のために恒常性を旨とするところがある。
人間界では、集団内では特定の個が連戦連勝しにくくなるようにチューニングが働くように出来ているように思う。
ぼくはゴルフはやらないが、ゴルフでも集団内で各プレイヤーがほどよく勝ったり負けたりするように「ハンデ」をつける。誰か一人が勝ち続けるとほかのメンバーが面白くないからその小集団の維持可能性が下がる。
小集団内の各プレイヤーの勝ち星負け星がだいたい均衡するようなチューニングの知恵がハンデだと思うのだがどんなもんでしょう。

 

さて、個の戦略に戻る。
小集団内で勝ち続け過ぎると小集団から追い出されるし、負け続けると心が折れる。
だから勝ち星負け星を複数の小集団に分けて拾いに行けばいいんじゃないか、という話だ。

 

『うらおもて人生録』の中に、ジャズマニアのタクシードライバーの話が出てくる(p.326-328)。
〈どのくらいジャズ好きかというと、ふだんは無口であいそがないんだけど、ジャズの話になると、眼が輝いてきて、運転している最中なんか、大丈夫かな、と思うくらいなんだ。〉(p.326)

 

このタクシードライバー氏は、職業生活とジャズマニアとしての生活と少なくとも二つのフィールドを持っている。職業生活では大きな勝ち星も負け星もあまり望まず、ジャズマニアとしての生活で金星を狙いにいく、人生トータルでいけば勝ち越し、というところだろう。

 

念のため付記すると、ジャズマニアとしての金星というのは、知識で誰かに勝るとかそういうマウンティング的なことを言いたいのではない。
名ジャズメンが生む奇跡の名アドリブ、伝説の名盤の1フレーズにより魂が揺さぶられる瞬間、そういったものに出くわすことこそがジャズマニアにとっての大金星、と言いたいのだ。
中古盤屋でディグして掘り出し物を見つけた一瞬とかジャケ買いしたヴァイナルが当たりだった時とかね。

 

いつか使ってみたかったんだよなー、「ヴァイナル」って言葉。
(続く)

 

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