ヤンキースタジアムと「とりあえず今は幸せ」

ヤンキースタジアムで思ったのは、赤羽駅前商店街だった。

上原隆氏のエッセイで、こんな店が出てくる。
赤羽駅前、朝の9時、店の名前は「まるまん屋」。朝から美味しいものをアテに、酒が飲める。
三交代制勤務、夜勤明け仕事帰りの中年男が、上原氏と言葉を交わす。
〈「これがまた、いいんだ。朝酔っ払って帰って寝るのがね。とりあえず今は幸せって気分でいられる」〉(上原隆『雨にぬれても』幻冬社アウトロー文庫 平成17年 p.200)

「とりあえず今は幸せって気分でいられる」。
なんて良い言葉だろうか。

2023年夏、ニューヨークに遊びにいって野球観戦してきた。
ジャッジ選手が、打席に立つ。
観客が歓声を上げる。

「とりあえず今は幸せって気分」。そんな気分を作り出すのが、マンハッタン人はうまいのかもしれない。
ヤンキースタジアムにブロードウェイ、メトロポリタン美術館に自然史博物館。街にあふれるスペイン語。活気と喧騒と興奮。車の排気ガス。
生きてればいろんなことがあるけれど、マンハッタン島では「とりあえず今は幸せ」という気分をあちこちで与えてもらった。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のミュージカルも楽しかったし。

というわけでマンハッタン島が与えてくれた「とりあえず今は幸せ」という気分を思い出しながら、クレジットカードの支払額を眺めています。また頑張って働きますかね。