ノーベル賞受賞者が必ずやっている超シンプルな3つのプロセス(R)

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東京工業大学大隅良典栄誉教授がノーベル医学生理学賞を受賞した。素晴らしいことだ。

 

ノーベル賞受賞者ときくと常人には想像もつかない思考と行動をしているかと思うがそうではない。 

ノーベル賞を受賞した人々が必ずやっていることは、実はある意味で大変シンプルである。

究極的には以下の3つのプロセスに集約される。

すなわち、

①数えてみる

②書いてみる

③変えてみる(①にもどる)

 

何かに疑問や問題意識を持ったならば、そんな3つのプロセスを繰り返す。

例えば、未知の病気Aの研究をしているとする。
まず最初に絶対にはずせないのが①の数えてみる、だ。
 人口10万人あたり何人、病気Aになるのか、数えてみる。
それからその病気Aの人は何歳ぐらいが多いのか、男と女のどちらが多いのか、地域や人種によって発症する割合に差があるのかとにかく数えてみる。
実際に数える作業をしてみると、今までスルーしてきたいろいろな課題が表面化する。
 病気Aをどう定義するか、どんな症状が出やすいのか、男女差や地域差・人種差があるとするとそれはなぜかなどなど。

よくわからない病気Aというものがあるねという感覚的で印象論的なふわふわした話から研究に昇華するには、こうした「数えてみる」というファーストステップは避けて通れない。

「There are three kinds of lies; lies, damned lies, and statistics. 世の中には3つの嘘がある。嘘、大嘘、そして統計だ」なんてこともいうが、そうはいってもデータや統計は思い込みや先入観、固定観念にタガをはめ、研究の土台をつくる。

 

①数えてみるのプロセスがひと段落したら、それを学会発表したり論文として書いてみることは必須だ。書くことによってますます問題が絞り込まれてくる。

なによりも研究というのは論文になってはじめて周囲に認知される。②書いてみるのプロセスは外せない。

 

時には①、②と同時並行になるが、③の変えてみるというのも必ず必要なものだ。

なんらかの実験をするときには、たとえば実験の際に温度を変えてみたり、試薬を変えてみたりする。動物実験でも一種類だけ遺伝子を改変した動物を使って病気のなりやすさの原因を探ったりする。

さまざまな条件を変えることによって、その自然現象で重要なファクターというものがあらわになってくる。

③変えてみるのも研究の重要なプロセスだ。

 

研究テーマを定め、①数えてみる、②書いてみる、③変えてみるを無限に繰り返すことこそ、ノーベル賞受賞者をはじめとする研究者たちが日夜取り組んでいることにほかならない。

 

そんなことを電車に乗りながら考えていたら、ふと吊り革が目に入った。
今の今まで気づかなかったが、この車両の吊り革、横一列に並んだなかに、長いものと短いものが混じっている。
じっと見ているうちに、なんでわざわざそんなことをするのかという疑問が浮かんだ。
同じ長さで揃えたほうが見栄えもいいし、コストだって安いだろう。

必ずなにか理由があるはずだ…。

 

というわけで、さっそく数えてみることにした。
まず、長いシートの前の吊り革だが、向かって左から短長短短短長短短長短となっている。全体の30パーセントが長い吊り革である。
それでは一車両にはいったい何本吊り革があるのだろうか。

 

さっそく端から端まで数えてみると、片側58本あり、そのうち11本が長い。
しかしそれ以外にも吊り革がある。車両の短軸と平行に3×14本の短い吊り革が存在する。
つまり一車両に158本吊り革があり、そのうち22本が長い。
約14パーセントが長い吊り革ということになるが、これはなにか人間工学的な理由に基づいているのだろうか。
人口あたりの小柄な人の割合などを加味した黄金比なのだろうか。

 

ここまで①数えてみる、②書いてみるを実践した。

次に行うべきは③変えてみる、だ。

そう考えてぼくは別の車両に移ってみた。乗る車両を変えてみるわけだ。

 

すると吊り革以外に新たに気になるものが出てきた。車内広告だ。
車両を、一番先頭の車両に「変えてみた」ら、なんと先ほどの車両と異なり、少女マンガの吊り広告で車内が占拠されているのだ。隣の車両は普通の広告だった。

「変えてみた」車両は先頭車両で、朝は女性専用車なのだった(ぼくが乗ったのは夕方で、女性専用ではない時間帯である)。
朝の出勤ラッシュ時は女性だけしかこの車両に乗っていないから、広告コストを抑えて少女マンガのターゲットに訴求するにはいい方法なのだろう。
なるほど。

 

電車の広告というのは面白い。

景気が悪いときは広告を出す企業も少ないのであちこちに空きスペースが目立ったり、鉄道会社の自社広告ばっかりだったりするし、最近気になるのは週刊誌の吊り広告で見る見出しが「わたしの終活」だの「間違いのない老人ホーム選び」だのばかりで、読者層が高齢化してるんだろうなと感じてしまう。

広告関連の仕事をしている友人Mにきいてみると、このあたりの観察は日課だそうだ。

Mによれば、十数年前にはパチンコの広告はあり得なかったという。司法書士事務所などの債務処理系の広告などは一時期すごく多かったとか、消費者金融も90年代までは車内広告は出しにくかったとか、電車の広告一つから時代の変遷を見ることができる。

 

このように、ノーベル賞受賞者が必ずやっている超シンプルな3つのプロセス、①数えてみる、②書いてみる、③変えてみる、を日常生活に取り入れてみると「痛勤」電車の中ですら多くの発見がある。

あとはノーベル電車DE賞の創設を待つばかりである。
(FB 2013年9月6日、11月28日を加筆改変)

 

つり輪 ホワイトBG-831

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