「何かやりたいけど何をやったらいいかわからない」「何者かになりたいけどそれが何かはわからない」という若者への無責任なアドバイス試案(その1)

「何かやりたいけど何をやったらいいかわからない」「何者かになりたいけどそれが何かはわからない」
そんな思いにとらわれたことのある人は少なくない。
青年期特有のものなのか、人生100年時代には周期的に襲ってくるものかはわからない。
若かりし頃の、そうした自分自身に向けてアドバイスするとしたら何というか考えてみた。順不同です。

 

①自分の本当にやりたいことをやれ。
当然ながらこれはナンセンスなアドバイスである。
そんなものがわかっているのなら悩んでいないわけだから。
右往左往、行ったり来たりしながらそうしたものがうまい具合に見つかったらラッキー、そしたらやってみなはれ。

 

②なんでもいいから手当たりしだいにやってみなはれ。
手ごたえは手探りでないと掴めない。
やってみないとわからないことは山ほどあるし、やってみてはじめて自分の向き不向きもわかるというものだ。
キャリア形成における偶発性の持つウエイトの大きさを指摘し「ハプンスタンス・アプローチ」を提唱したクランボルツは、「情熱は行動によって作られる。必ずしも情熱のあとに行動があるわけではない。まず行動があり、そのあと情熱が生まれることも多い」と述べている(『その幸運は偶然ではないんです!』ダイヤモンド社p.76)。

 

③適性なんかそうそうわからない。
自分に何が向いているかなんてのはわからない。
iPS細胞でノーベル賞もらった山中先生も、整形外科医としてキャリアをスタートさせた。整形外科医としては不器用なほうで、周囲から「ジャマナカ」と言われていたという。
大事なことは、ノーベル賞受賞者ですら、キャリアをスタートする前には自分が整形外科医に向いていないことも基礎研究に向いていることもわからなかったということだ。

 

④来た仕事は(ひとまず)なんでも受けてみる。
自分に何が向いているかは世間が決めてくれる、という考え方である。
漫画家しりあがり寿氏は独立するとき、自分が漫画家として何がやりたいかわからなかったそうだ。
そこで氏のとったアプローチは、来た仕事は何でも受ける、というものだった。
〈きっと何でも受けていれば、自分がダメな分野の仕事はこなくなって、自然に仕事の幅が収斂してゆくだろう。逆にいつまでもいろんな仕事がくればそれはそれでいいじゃないか(略)〉(『表現したい人のためのマンガ入門』講談社現代新書p.164)と考えたという。
この話は、「何をしたいかわからない」段階の話なので、来た仕事を何でも受けているうちに自分自身で適性に気づいたり、仕事の好き嫌いがわかってくればシフトチェンジして構わない。

 

⑤「あるべき社会」「あってほしくない社会」から考える。
自分のことはよくわからないが、他人のことはよくわかる。
「何かやりたいけど何をやったらいいかわからない」段階では、思い切って「あるべき社会」や「あってほしくない社会」から考えてみる。
やなせたかし氏がアンパンマンを描いたのは、「世の中で一番の悪は、“飢え”だ」と思ったからだという。アンパンマンが自分の顔を差し出すのは、〈ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。そしてそういう捨身、献身の心なくしては正義は行えません(略)〉(『あんぱんまん』収載「あんぱんまん について)とやなせ氏が考えるからだ。
「あるべき社会」や「あってほしくない社会」をまず考え、その実現や回避のために自分ができることやれることを探すアプローチもあるわけだ。

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