いやいやながら近藤誠氏の記事『「インフルエンザ予防接種」打つ必要はない』(週刊文春11月23日号p.147)を読む。
いろいろ言いたいことはあるのだが、「がん検診有害論」と通底するのは、もしかして氏は疫学的思考、公衆衛生的思考ができない、したことがないのではないかということ。
疫学的思考とは、人間を個ではなく集団としてとらえて病気をコントロールすることだ(あってる?)。
インフルエンザの場合、みんながワクチンを打つことで集団としてインフルエンザにかかる総数を減らすことを目指す。集団としてインフルエンザにかかる総数が減ることで、結果として小児や高齢者、治療のため免疫抑制剤を飲んでいる人など、免疫機能が低下している人々もうつされるリスクが減る。
ワクチンを打つ打たないは自分か親が決めろ、と記事はまとめられているが、ワクチンを打つことはまわりにいる小児や高齢者などウイルス感染に弱い人々にうつしにくくするという意味もあって、そこらへんが氏には絶望的にわかっていない。
<「世間では、インフルエンザが恐ろしい病気であるかのように考えられていますが、実は風邪と大差がありません。インフルエンザにかかったとしても、症状は『少しきつめの風邪』程度のものでしかなく、それほど恐れることはないのです。(略)」>(p.147)と記事は書くが、ちょっと医学をかじったことがあれば1918年ー1919年のスペインインフルエンザのことを思い出すはずだ。
このときは日本国内で38万人が死亡、世界では約1億~5億人が死亡したという(①)。1968-1969年の香港インフルエンザでも世界で約100万人が死亡した(①)。
『少しきつめの風邪』でこれほどの人が死ぬだろうか。
そのほかにも氏が知らないことが山ほどある。
こういう論文もある(twitterでs_matashiro@glasscatfish氏がツイート)↓
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM200103223441204