コロナ禍と山本七平『日本はなぜ敗れるのかー敗因21ヶ条』

敗れた事実は変わらない。
問題なのは、敗れたあとに学ばないことである。
 
コロナのはじめのころ、本間 正人先生から一冊の本を勧められた。
山本七平著『日本はなぜ敗れるのか-敗因21ヶ条』(角川oneテーマ21 二〇〇四年。原文は1975〜1976年)。日本がなぜ第二次世界大戦でアメリカに敗れたかを論じた本だ。
 
敗因21ヶ条の1番はこうだ。
〈精兵主義の軍隊に精兵がいなかったこと。然るに作戦その他で兵に要求される事は、総て精兵でなければできない仕事ばかりだった。武器も与えずに。(略)〉
敗因21ヶ条はこう続く。
〈物量、物資、資源、総て米国に比べ問題にならなかった。〉
〈日本の不合理性、米国の合理性〉。
 
自分の主張に都合の良いところだけピックアップするが、7番目には〈基礎科学の研究をしなかった事〉、17番目は〈国民が戦いに厭きていた〉とある。
 
コロナ禍のはじめの頃、欧米指導者は明確にこれは「war(戦争)」であると定義した。
戦争である以上、戦略が必要だし、兵站も整えなければならない。莫大な資金を注ぎ込み、新たなる武器も開発しなければならない。決して神風を待つだけではならないのだ。
 
知的フェアネスに基づき考えれば、コロナ禍に対して今のところ日本は欧米に比べてはるかにうまく戦えている。感染者や死亡者数を見れば明らかだし、ほかの感染症であるインフルエンザが激減していることからも、感染対策が奏功しているといえるだろう。一時言われていたコロナウイルスに対する「ファクターX」だけではインフルエンザ感染の激減が説明できないからだ。インフルエンザ患者数は昨年比99%減(!)だという。マスコミは、「ウイルス干渉」とかなんとか仮説に過ぎないものをしたり顔で語るのではなく、国民全体による手洗い、マスクの励行やインフルエンザワクチン接種の増加、「三密」回避といった地道な努力の成果こそコロナ抑制のカギであると世界に向けて報じるべきだろう。
 
だが今まで最善だったか、これから最善かはわからない。最善でなかったのならバージョンアップしていけばよい。
 
そんなことを思いながらネットを眺めていたら、とある学校で特殊なマスクをして合唱祭をやるというニュースが飛び込んできた(ぼくが非難したいのはgoサインを出した責任者だけで、生徒に罪はないのであえてぼかして書いた。ネットニュースでは写真でちゃってるし)。
 
山本氏は、敗因21ヶ条の最後を〈指導者に生物学的常識がなかった事〉を挙げた。
 
コロナとの戦いに、敗れるわけにはいかない。

 

3分診療時代の長生きできる 受診のコツ45

3分診療時代の長生きできる 受診のコツ45

  • 作者:高橋 宏和
  • 発売日: 2016/02/20
  • メディア: Kindle版