次のコロナが来る前に。

古代ローマから続く迷信に「ダチョウは脅威が近づくと砂の中に頭を隠す」というものがある。
頭を隠せば体全体が隠れると思うのか、見なければ脅威も消え失せると思うのか、実際には迷信だそうだが、英語だと「He is hiding his head like an ostrich」というふうに使うとWikipedia先生が言っていた。

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写真:photoACより




本当に幸いなことに、国内では新型コロナ感染者数が減ってきた。この間に我々が新たにやった大きなことといえば海外との往来の抑制(激減)、外出自粛、「三密」回避なので、人為的な成功要因としてはとにかく「濃密接触を避ける」ということだろう。
季節変動の要素がどのくらいあるかは、これから南半球の感染がどうなるかでも情報を得られる。
だがもちろん、新型コロナの脅威が消失したわけではない。砂の中に頭を突っ込んで見ないようにしても、脅威はある。
(おそらくだが)この秋から来る第2波のことだ。

 

新型コロナが風邪やインフルエンザと同じように振る舞うと仮定すれば、この秋冬、今から約5ヶ月後ころに第2波が来る。
結論から言えば、この秋、約5ヶ月の間に、誰もが納得するほど決定的な治療薬やワクチンは確立しないだろう(「効くかもしれない」程度のものは使えるようになるかもしれない)。新しい治療薬やワクチンが万人に対して有害ではないこと、さらに病気に対し効果があることを立証するプロセスには通常は最短数年かかるものだ。


ということは、この秋までに第2波に備えた体制づくりをしなければならない。
ぼく自身の足元からいえば、クリニック用のマスクやガウンの確保、感染予防対策、経費の見直し、「cash is king」の考えかたに従った運転資金確保といったところだろうか。一医療者としては心的抵抗もないわけではないが、オンライン診療の導入も考えなければならないだろう。


また、社会全体に目を向けると、順不同で、冬場にまたリモートワークをするならば通信環境のさらなる強化、第2波のときに一斉休校するべきかの検討、もし一斉休校するならオンライン授業の下準備、新型コロナ第2波のときの医療体制整備や物流強化も必要だ。
飲食業界も、5ヶ月後の秋冬の需要減に対しの備えが必要で、それが「手仕舞い」なのか「夏場に稼ぐ」モデルなのか「夏場に実店舗で熱烈なファンを作って冬場はテイクアウトでしのぐ」モデルなのかはわからない。


今回の第1波の時に取られた対策のうち、何が効果的で何がそうでなかったかの検証もしなければならない。
感染症に国境はないので、効果的だっただろう「三密」回避やマスク・手洗い習慣などは積極的に他国に推奨すべき(おそらく室内で靴を脱ぐ習慣や頻繁な入浴もだろう)で、他国の感染を減らすことが、輸入される感染を減らすことになる。
もちろん他国で取られた対策の研究も必要だ。


いずれにせよ第2波が来るのは確実なので、砂の中に頭を突っ込んで脅威から目をそらすのだけはやめたほうがよいだろう。

 

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