仕事に入る前にトラブルを起こしそうな相手を見分ける方法とm&m'sチョコ。

そのm&m'sには、決して茶色を入れてはいけない。彼らも、命懸けなのだから。

仕事の良し悪しの多くは、仕事相手にかかっている。一緒に仕事する同僚やクライアント、顧客が良識ある人々だったりきっちり約束を守る人たちだちだったら気持ちよく仕事ができるし、そうでなければ何かしらトラブルが起きる
トラブルシューティングというのはマイナスをゼロに近づける作業で、気力も労力も大きい。
同じだけの気力や労力をゼロからプラスに持っていく作業に振り分けたほうがはるかに益が大きいから、トラブルシューティングは出来るだけ少ないほうがよい。
そのためには、出来うる限りトラブルサムな人物とはかかわらないことだ。

仕事に入る前の段階で、トラブルを起こしそうな顧客を出来るだけ選別する方法というのは色々ある。
わざと値段を高めに設定すれば、悪質に値切るような顧客はかかわってこない可能性が上がる。
高価そうな腕時計や靴や鞄できっちり武装すれば、だらしないクライアントには敬遠される。
オシャレな土地にブティックやレストランを構えれば、オシャレじゃない客は近寄らない。
トラブルになりそうな人が寄ってこないようにする術は、いろいろとある。

仕事に入る前にトラブルになりそうか判別するエキセントリックな方法が、m&m'sチョコを使ったやり方だ。1980年代に、ヴァン・ヘイレンによって開発された。

〈バンドのツアーに関する契約書には、53ページもの付帯事項があって、技術や安全面の細かい指示に始まり、食べものや飲みものに関する
要求事項までが、事細かに指示されていた。〉(スティーヴン・レヴィット他『0ベース思考』ダイヤモンド社 2015年 p.185-188)
この膨大な契約書付帯事項の中に、ツアー中にバンドのために用意されるスナックについての記載もあった。すなわち、〈「m&m's(警告 絶対に茶色のものがあってはならない」〉。
なぜか。

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上掲書によれば、ヴァン・ヘイレンのライブは殺人的な爆音とド派手な照明装置、それを可能にする空間やステージの頑丈さと十分な電圧が必要だった。しかしツアーのプロモーターの中には、それらを用意するのを怠るものもいた。契約書に書いてあるというのに。

演奏中、機材が倒れてメンバーが死んでしまったりする前に、プロモーターが契約書を隅から隅まで読んで、付帯事項に書いてあることを逐一実行しているかどうか確かめるにはどうしたらいいだろう?
そこで、茶色いm&m'sの出番である(茶色以外のm&m'sの出番というべきか。茶色には出番がないのだから)。

ツアー先に降り立って、用意されているm&m'sチョコに茶色いものが混ざっていなければ、ステージ機材や会場の電気設備などその他の付帯事項も契約書に沿って忠実に実行されている可能性が高い。
m&m'sに茶色のものが混ざっていれば、プロモーターは契約書付帯事項のその他の項目もテキトーに扱っているかもしれない。

〈(デイビッド・リー)ロスは茶色のm&m'sが入っていたときは、きっちりと更衣室をめちゃめちゃに荒らしておいた。やんちゃなロックスターとしてふるまうことで、罠がバレないようにしていたのだ。〉(上掲書p.188
思わず「ジャンプ」したくなるほど面白いアイディアである。

ちなみに写真はその時に誠意あるプロモーターにより選り分けられた茶色いm&m'sである。わずかに現存する貴重なものをさる筋から入手したのだが、もちろんウソである。さっきキヨスクで買ったばかりだ。

 

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