先に申し上げておくと、今日の結論は、「わからない」である。少なくとも現時点では。
ここ数ヶ月ずっと知りたくて仕方がないのは、「なぜ欧米ではあれだけ新型コロナで人が死んでいるのに、日本はこの程度で済んでいるのか」ということだ。
【毎日更新】新型コロナウイルス国別発生状況まとめ|世界感染者数の推移グラフも | Comical Piece
2次ソース、3次ソース、4次ソースをもとに公衆衛生の素人であるぼくがああだこうだ言っても仕方がないとわかりつつ、ついつい考えてしまう。
社会的インパクトや経済的影響を加味すると、この問題は21世紀前半最大のミステリーではないかとすら思う。
自分の頭の整理のために考えながら書く。
一時期注目されたのは「BCG仮説」だ。
BCGワクチン接種は新型コロナに有効か — サトウ・ジュン – アゴラ
ただ、2020年5月時点では「BCG仮説」はやや分が悪くなっている。
BCG接種を行なっている(とされる)ロシアでは新規感染者が連日1万人をこえているというし、13日付ニュースではロシアの感染者数は世界2位になったというから、ここ最近の動きではBCG仮説の「確からしさ」は低下と言ってよいと思う。これまた間接的データだが、5月6日付ニュースではアフリカ大陸では同時点で4万7581人の感染が確認されている。アフリカ諸国でもBCG接種は行われている。(頭の整理なのでBCGの株についてはここでは触れない)
アフリカ 感染者3万人に迫る 新型コロナウイルス | NHKニュース
一方、ドイツではBCG仮説の検証のため治験中という。
ドイツで、BCGワクチンの新型コロナウイルスへの効果を検証する臨床試験はじまる(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース
人種的な要素に関し、アメリカではアフリカ系の感染者・死亡者が人口割合に比べ多いことは指摘されている。
米国の新型コロナ犠牲者、黒人が突出 人種問題に飛び火か?(猪瀬聖) - 個人 - Yahoo!ニュース
イギリスデータではアフリカ系とともに南アジア系の患者が多いことを4月にBBCが報じている。
新型コロナウイルスの被害、人種に偏り? イギリスでは - BBCニュース
ニューヨーク州ではアジア系の患者ももちろんいて、アジア系だから極端に感染しにくいとまでは言えなそうだ。
コロナ死者数、人種・民族に差 NY市長「不平等だ」 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
基礎疾患の多さ少なさはかなり関係していそうである。
新型コロナ(の重症化)には血管系のダメージがかなり関係するようだというのはここのところ言われていて、高血圧や糖尿病などをもともともっている人にとっては不利な病気であるのは相当確かだと思われる。
新型コロナウイルス、致死率が高い「基礎疾患」リスト(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース
弱毒/強毒のウイルスがあり、日本に入ってきたのは弱毒(定義もあいまいなまま不正確に言葉を使っている自覚はある)だった、というのももちろんありそうな話だが、これだけ国内外で人の出入りが激しいのだから、弱毒ウイルスが先に日本に入ってきたとしても、そのあと遅れて強毒(不正確な語を使うとムズムズするが)が入ってくるはずだ。
だからこの説が正しいとするには、一度弱毒にかかった人は強毒にもかからないことを証明しなければならない。また、この仮説が正しいとするならば、すでに日本に広く弱毒にかかったことのある人が多いことも証明しなければならないが、無症状者でのPCR検査や抗体検査など限られたデータではそんなこともなさそうだ。
東京新聞:<新型コロナ>コロナ以外で治療 入院患者2.7%陽性 慶応大病院:社会(TOKYO Web)
東京新聞:<新型コロナ>抗体検査5.9%陽性 市中感染の可能性 都内の希望者200人調査:社会(TOKYO Web)
(注 上記両者とも母集団に偏りがあることに留意)
あとは手洗いマスク、入浴や部屋では靴を脱ぐなどの生活習慣、挨拶でハグやキスをしない、口角泡を飛ばして話しまくったりしないという風習による差だろうか。個々はちょっとした差でも積み重なると大きな差を産む、というのを「マージナル・ゲイン(小さな改善)」というそうだ。イメージしやすいのはF1レースで、ピットでのタイヤ交換などのコンマ数秒の早い遅いの積み重ねが、勝者と敗者がそれぞれ得るもの失うものにとんでもない差をもたらす(マシュー・サイド『失敗の科学』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2016年 p.213-235)。
この冬は例年に比べインフルエンザや普通の風邪も激減した。
インフルエンザ患者低調 新型コロナウイルス対策が影響か - 産経ニュース
おそらく全国民がコロナを恐れ、マスクしたり手洗いしたりで減ったはずで、想像以上にそうした手洗いマスクは感染予防に有効ということが確認されたといえるかもしれない。
また、換気の影響もあるかもしれない。
友人Jさんの指摘だが、暑い国は換気の習慣もある。
手元にエアコン使用の国別データはないがが、ニューヨークとかはエアコンメイン(な印象)で、あれは室内の空気をぐるぐる循環させているわけだから、部屋にウイルスをまき散らす人がいればその循環した空気を介して感染は広がる(レジオネラを想起していただきたい)。
友人Sからは、湿度と温度との関連も指摘されている。
オーストラリアなどこれから冬に向かう南半球の動向が、このウイルスの性質を知るのに役立つはずだ。
いずれにせよわからないことだらけなコロナ感染だが、上記のような生活習慣のマージナル・ゲインが、日本と欧米にこれだけの差をもたらしているのだろうか。
考えても考えてもナゾは深まるばかりである。
我々はこのナゾを解明するため、ジャングルの奥地へと向かった(ウソ)。