◯◯という食べ物でコロナがおさえられるかも、と××大学が研究を発表」というニュースを見ると悲しくなる

誰かをdisりたいわけではないのだが、「◯◯という食べ物でコロナがおさえられるかも、と××大学が研究を発表」というニュースを見ると悲しくなる。
英米は物量とスピード感でワクチンを開発してバンバン打って感染を減らしている。
日本はいつまで「おばあちゃんの知恵袋」みたいなこと言ってるんだろう。
 
アメリカは物量とスピードで、イスラエルは知恵で、中国は強権でウイルスを抑え込もうとしている。
ウイルスという大自然に、人間の小手先では勝てない。
奇襲戦法や逆転の秘策や小兵が大敵を必殺技で倒すとかはないんです。正攻法でゴリゴリ押していくしかコロナ制圧の道はない。
 
慌ててつけくわえると、超早期に「三密」概念を樹立し周知したのは日本の公衆衛生の素晴らしい成果です。あれでどれだけの感染が防げたか。
また、ワクチン大事ですがもっともコスパのよいのは手洗い、マスク、三密回避なのは絶対的な真理とおもってます。
 
「三密」概念の樹立と周知はほんと素晴らしくて「たくさんの人に感染させるウイルスのタイプや人がいるんじゃない、感染拡大しやすい場所や状況があるんだ!そこをたたけばいいんだ!」とあのスピードで発見して政策化したというのはほんとにすごい
未知の病気と人類が遭遇したのが2019年12月末、それからたった1,2ヶ月で概念を発見し政策化して周知した、驚異のスピードでした。
 
また、産業支援などの補助金等の政策も、日本では今まで比べて驚異的なスピードで実施されたと感じています。ふりかえってみると2020年2月時点にはもう各種補助金とかが使える体制になっていた。申請も驚くほどシンプル。
無謬性神話に基づく日本の行政の動きとしては驚異的な速度だったかと思います。裏でたくさんの人の不眠不休の努力があったはずで、いつの日か城山三郎『官僚たちの夏』的に、コロナ克服の行政、医療分野等の人々の働きが作品化されるとよいなあ。
 
話を戻します。
ハンス・ロスリング『ファクトフルネス』の言い方を借りると、「日本はこれまでコロナ対策をうまくやった」という事実と、「日本はこれからコロナ対策をさらにうまくやる余地がある」という事実は両立します。
で、後者に関しては、ゴリゴリ物量と合理性で押していくべきかなーという話です。
んで、蛇足なんですけど冒頭の話に戻ります。大学関係者とかは1億パーセント今さらだとは思うんですが、冒頭のような「おばあちゃんの知恵袋」みたいな研究ばかり出てくるのは、大学などの研究機関に十分研究費がまわってこなくて、企業とコラボして研究資金獲得せよみたいな世の中にしてしまったせいだと思っています。少なくとも研究に関しては「選択と集中」で資金を絞るのはまったくの間違いで、幅広く研究資金を出していないと、国が滅びます。

研究者は研究者でサバイヴしなければならないので、個々の研究者をdisる意図はまったくありません。
ただ、「おばあちゃんの知恵袋」みたいな研究ばかりが出てきてしまうのは、やはり大学への研究資金をしぼっているせいで、大学側はやむなく食料品メーカーとかとコラボして、「〇〇という食品が××に効くかもしれないし効かないかもしれないということが、マウス6匹の研究から明らかになった。今後の研究に期待」みたいなかたちでプレスリリースしないといけない状況に追い込んでしまった政策のミスだと思います。
大学の研究資金問題の話はあくまで仮説ですけども、そんなに間違っていないんじゃないかなあと思います。ぼくの専門分野でも「○○という食べ物が認知症に効くかもしれないし効かないかもしれないということがマウス6匹であきらかに・・・」みたいなニュースが目につきます。

あと、「おばあちゃんの知恵袋」的な話ばかりがニュースに取り上げられるのは、典型的な「自転車置き場の議論」ですね。

psychology.nerim.info

 

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