うがい薬、イソジンが消えていた。
正確に言うと、発売元の株式会社 明治のサイトから、「イソジン」の文字が消え、単なる「明治うがい薬」の名前で売られているのである(4月11日現在)。
「イソジン」の商標を持つアメリカの会社、ムンディファーマ社と明治の契約が切れ、「イソジン」の名前を明治が使えなくなったのがその理由だ。
「イソジン」が、カバくんに別れを告げた理由 | 医薬品・バイオ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
イソジンと言えばうがい薬だが、手術の消毒の時にも使う。医学生時代、研修のときに外科のドクターが「イソジンで消毒してから云々」と話しているのを聞いて、はじめは「イソジン」というのが医者スラングの一つかと誤解していた。うがい薬と別もののプロユースの消毒薬を、見た目が似ているので隠語的に「イソジン」と呼んでいるのかと勝手に思っていたのである。
うがい薬と基本的には同じものだと後から聞いて、「イソジンすげー」とびっくりしたものだ。ちなみに薬品名はポピドンヨードで、手術用消毒液とうがい薬では濃度が違う。消毒用は10%だが、うがい薬は1ml中70mgのポピドンヨードが入っている。
http://www.meiji.co.jp/drug/meiji-ugai/products/gargle/pdf/gargle.pdf
さて、ぼくがイソジンと聞いて思い出す場所は手術室以外にもう一つある。コロンビアだ。
知人にAさんと言う人がいる。
ちょっと変わった人でぼくは大好きなのだが、過去数回の海外渡航歴のすべての行先がコロンビアなのだ。
念のため言っておくとまっとうな職業の方である。南米、なかでもコロンビアにとことんほれ込んでしまったのだ。
きっかけは大学の指導教官に勧められたからとか言っていたような気もするし、「解放の神学」がどうとか言っていた気もするが、なにしろAさんと会うときはしたたか酔っぱらっているので詳しくは覚えていない。
Aさんの話はどれも飛びぬけて面白い。
つかみからしてぶっ飛んでいて、「コロンビアの首都ボゴタで野宿していたらさあ」とか平気で言うのだ。コロンビアと言えばあのカリ・カルテルと連想してしまうぼくとしては、ボゴタで野宿と聞くだけで腰を抜かしてしまう。危なくないんですか?
「大丈夫だよ、時間と場所さえ選べば。
コロンビアってカトリックでしょ。
中南米のカトリックっていうのはさ、キリストも偉いんだけど、キリストを生んだマリアが一番偉いわけ。だからさ、コロンビアで一番偉いのはセニョーラ、おばちゃんなんだな。
宿に着いたらとにかくその宿のおかみさんに気に入ってもらうことが大切なんだよ。宿のおかみさんとおしゃべりしたり、掃除とか手伝ったりして気に入ってもらう。
おかみさんに気に入ってもらうとさ、街にたむろしている気の荒い若い衆も、あのAという日本人はあのセニョーラのアミーゴだからと言って手を出さなくなるのさ」
中南米のカトリックでキリストよりマリアが偉いというのはAさん説なので、ほんとかどうかは知らない。
じゃあ言うほど危険じゃないんですね、コロンビア。
「そうだよー、大丈夫だよ。
街の教会とか行くとさ、昼間っからいかつい大男が懺悔しているわけ。
神様、私は今週、“ビジネス”で敵対するマフィアを4人撃ち殺してしまいました、罪深い私をお許しください、なんて涙ながらに懺悔してるんだぜ。
神父のほうも神妙な顔で、あなたの罪は許された、なんて言ってるし。
で懺悔が終わると晴れ晴れした顔でいかついひげ面の男が出てくるわけ。あ、これは来週も“ビジネス”するんだろうなーなんていって俺は見てるけどね」
危ないじゃないですか…。
Aさんから聞いたのは事実だが、ほんとかどうかは知らない。
イソジンの話と遠く離れた。
そのAさん、コロンビアに旅する時に必ず持っていくものがイソジンだ。
あ、旅行中にうがいするんですね、健康管理のために、とぼくが言うとAさんは答えた。
「違う違う。ジャングルの奥地とかに行ってさ、どうしても泥水を飲まないといけないときがあるじゃない。そんなときに泥水にイソジン垂らして飲むわけ。
なにしろ消毒薬でしょ、泥水の中のバイキンが全部死んで、腹を壊さないってわけさ」
理屈はあってる気がするが、ほんとかどうかは知らない。
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