週刊現代<気をつけろ!減塩しすぎると認知症になる>に気をつけろ!

今週発売の週刊現代の表紙には<気をつけろ!減塩しすぎると認知症になる>の文字が躍っている。

ここのところ週刊ポストを筆頭にアンチ減塩ブームと味噌汁の猛プッシュが激しいが、内容がテキトーなので困ったものだ。「肩こりは動物霊のせい」でおなじみのDeNA系webメディアを笑えない状況だ。

 

電車の吊り広告などを見て購入を迷ってる方に申しあげます。
結論から申しますと、表紙と題名に書いてある<減塩しすぎると認知症になる>という具体的な話はほぼまったく本文に書いてありません

 

それらしき部分、<減塩しすぎると認知症になる>という文全体のキモとなるはずの部分も支離滅裂で意味不明だ。
<近年続々と、行き過ぎた減塩が動脈硬化につながることが指摘されている。高齢者にとって動脈硬化は、脳梗塞などを引き起こし、その予後に現れる「血管性認知症」につながる事態だ。九州大学が実施している疫学調査「久山町研究」によると、正常な血圧の人と比べて、軽い高血圧、つまり動脈硬化傾向の人は4.5~6倍、重度の高血圧の人では5.6~10.1倍に、血管性認知症の発生頻度が高くなるという報告があるほどだ。>(週刊現代12月17日号 p.44~p.45)

 

1番目の文章<近年続々と(略)>と、3番目の文章<九州大が実施している(略)>の文意がつながっていない。<(略)血管性認知症の発生頻度が高くなるという報告があるほどだ。>の<ほどだ>の意味が成立していないのだ。
たぶん書いている人も意味がわからず書いているのだろう。

記事全体を何度読んでも行き過ぎた減塩が動脈硬化をきたすということがどこにも証明立てられていない。減塩しすぎた人のほうが病気のリスクが上がるという研究があると繰り返し述べるばかり。

本来この文章は、行き過ぎた減塩が動脈硬化を示すという直接的な証拠を提示し、「そして」でブリッジして<高齢者にとって動脈硬化は、脳梗塞などを引き起こし、その予後に現れる「血管性認知症」につながる事態だ。>と続けなければいけない。ちなみに<予後>の使い方も間違っている。

さらに久山町研究の話を使いたいんだったら、三番目の文章はあえて二つに分けたほうがまだよい。というのは、本来、久山町研究のデータが示しているのは「血圧が高い人は血管性認知症になりやすい」(これは事実)である。だから久山町研究の話を出して、「血圧が高いということは動脈硬化傾向ということで、先に述べたように行き過ぎた減塩は動脈硬化の原因の一つなのだ」くらいでとどめておかなければならないはずだ。

 

また、認知症には血管性認知症だけでなく、アルツハイマー認知症(これが大半)やレビー小体型認知症もあるので、そちらへの言及もしたほうがよい。

 

文章全体のまとめ方もひどい。
<塩分を減らすことが健康につながる事実はない。間違った常識を盲信すると、健康を害することになる。>(p.47)

とまとめているが、文章のテーマである「行き過ぎた減塩」と「塩分を減らすこと」は似て非なるものである。
少なくとも、適度な減塩は胃がんを減らし、高血圧を減らすことで脳出血などを減らすことは明らかだ。

ganjoho.jp

 

以下重箱の隅的に。

そもそも「○○しすぎは身体に悪い」というロジックほど空しいものはない。完全なるトートロジー、同語反復だからだ。

「減塩しすぎは身体に悪い」を例にとる。

減塩しすぎは身体に悪いというが、どの程度の減塩が「しすぎ」なのか。どこまでが「ちょうどよい減塩」で、どこからが「減塩しすぎ」なのか。つきつめて考えると、「減塩しすぎ」な減塩の加減は、けっきょく身体に悪影響がでる程度の減塩ということだ。

だから、「減塩しすぎは身体に悪い」という文章は「身体に悪影響が出るほど減塩すると身体に悪い」といっているだけで、当たり前の話だ。

この構造は「運動しすぎると身体に悪い」「酒飲み過ぎると身体に悪い」などにも共通で、身体に悪いレベルを「○○しすぎ」と定義する以上、新しい情報を生み出さない文なのだ。

 

「減塩はダメ!塩は大事!味噌汁は身体にいい!」と盛り上がっているので、塩対応でミソつけてみた。



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