男と女-東京03風に。(R)

「それはさ、お前がオスとして相手を惚れさせてないってことなんじゃないの」
居酒屋でOさんの到着を待っている時のこと、隣の席から話し声が聞こえてきた。
先輩ビジネスマンと若手の後輩らしい。

「でも先輩、オレの嫁さんなんだからオレだって気持ち分かって欲しいっすよ。
そりゃ会社辞めるのは不安だけど、せっかくのチャンスだし、妻に反対されるとかはマジきついっす」
転職か独立の相談らしい。
先輩が言う。
「だからさ、さっきから言ってるじゃん。
嫁さんがお前のやりたいことに反対するってのはさ、お前が嫁さんのことをオスとして惚れさせてないって証拠なんだよ」
「力づくで言うこと聞かせるってことすか?」
「バカ、全然ちげーよ。お前ね、分かってなさすぎ。
 あのな、男だってそうだろう。
よく女に騙されて会社の金使い込むやつとかいるじゃん。
まあそれは悪い例だけどよ、あれみればわかるけど、男も女も惚れた相手だったらとことんついていく訳だよ。
だからさ、お前のカミさんがお前のやりたいことに反対してるってのは、お前がオスとしてカミさんをベタ惚れさせる努力をおこたってるってことなんだよ」
隣で盗み聞きしてるこちらまで叱られている気がして、僕は思わず縮こまってしまった。

 

「な、わかったか。わかったらいいから飲め!」
「…わかったっす。でも先輩、一つだけ言っていいっすか」
「なんだよ」
「すげー勉強になったっすけど、…先輩、そんなこと言っていまだ独身じゃないっすか」

 

嗚呼、日本の夜明けは遠い。
(FB2015年5月8日を再掲。「先輩」は東京03の角田氏の雰囲気でお読みください)

 

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