ぼくらが中曽根康弘氏から学べるいくつかのこと。その5

中曽根康弘氏の話をもう少し。

 

〈(ゴルフの順番待ちの時)中曽根さんは(略)、隣にSPを座らせて、しゃべりかけるんです。「このSPをやる前は、君、今までどういう仕事をしてきた?」なんか訊いている。SPが、「自分は白バイに乗ってまして」と答えると、「おお、白バイか。あれは面白いだろうけど、どうだね、白バイに乗ってて何かいいことあったかね」とか「SPになって何か特に苦労することはあるかい。家族は心配してるんじゃないかね」とか、普段着な感じでいろいろ話してるんです。等身大の人間というものに興味を持っているのが伝わってきました。これはやっぱり彼の長所ですね。〉(城山三郎『少しだけ、無理をして生きる』新潮文庫 平成二十四年 p.124 括弧内は筆者)

 

政治家とは「人たらし」である、という。
出会ったとき挨拶したとき握手したときに、なんとも表現し難い人を惹きつけるものを持つ者だけが、多くの有権者の票を預かって政治家として活躍することができる。
ある者は生まれながらにしてその魅力を備え、ある者は努力して身に付ける。

 

人と人との間を泳いで浮世を渡っていく身であれば、政治家ならぬ我々もまた、なにがしか人間的な魅力を持っていたほうが良かろうと思う。
古来より士は己を知る者のために死す、という。
冒頭エピソードのSP氏は、総理大臣自らが己のことを知りたがったことにおおいに発奮したことであろう。

 

己を知って欲しければ、まず自ら相手のことを知れ。
己に惚れて欲しければ、まず自ら相手に惚れよ。
人を魅了したければ、人に魅了されよ。
そのためには、まず目の前の人に真摯に向き合え。

 

そんなこともまた、ぼくらが中曽根康弘氏から学べることの一つかもしれない。

 

手放しで礼賛するつもりもないので、次は反面教師として中曽根康弘氏を見てみたい。
(続く)

 

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

3分診療時代の長生きできる受診のコツ45

  • 作者:髙橋 宏和
  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2015/11/06
  • メディア: 単行本