「止まない雨」とか試練とか。

「止まない雨はない」というヤツには「それより先にその傘をくれよ」と思うし「出口のないトンネルはない」というヤツには「トンネルじゃなくて洞穴だったらどうする」と思うし「辛いに一本棒を足せば幸せになる」というヤツには「何勝手に一本棒持ってきてるんだよ返してこいよ」と思う。

 

そりゃまあ今を我慢しなければならない局面というのもあるが、今を我慢すれば未来が楽になるから今を我慢しろみたいなことを言われると反発もしたくなる。つらい人つらい時というのは、今つらいんだっつーの。

 

ゲーテが、恋を失った心の痛みについてこんなことを主人公に言わせている。 〈(略)はたから『愚かな女だ、辛抱して時のたつのを待っていれば絶望もしずまるし、別の慰め手もきっと出てくるだろうに』なんていう人はどうかしているよ。ーそれはまるで『熱病で死ぬとはばかなやつだ。体力が回復して精がつき血の混乱がしずまるまで待っていれば、万事具合よくいっただろうに。そうして今日まで生きていられただろうにね』というようなもんじゃないか」〉(ゲーテ『若きウェルテルの悩み』新潮文庫)

あとになれば元気になるからという理屈で今つらい人を励まそうとしてもナンセンスだということだろう。

 

これと似たような話で「神は乗り越えられる試練しか与えない」なんてことを訳知り顔でいう人もいるが、あれも話半分に聞いておいたほうがよい。

聖書にはこうある。

〈神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます。〉(『コリントの信徒への手紙一』10:13)

逃げ道もあるんじゃないか。

 

そんなわけで、もしあなたが本当につらい時に誰かがしたり顔でアドバイスしてきたら話半分に聞いておくほうがよい。どうせテキトーに言ってるだけだし。

そんなことよりスイーツでも食べて布団にくるまってゴロゴロしていたほうがはるかに有益だってゲーテがファミレスで言ってた。ドリンクバー全部制覇してたぜあいつ。