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ひとが会社を辞める時(R)

「調べてみるとね、人が辞める時期って、二つピークがあるんですよ。
入社1,2年目と10年目くらいに辞める人が多い」
人事部長さんが言った。
そのときぼくは、あるメーカーの工場で2週間ほど「見習い工員」をしていた(本当)。
毎日ジンキー(さび止め)を金属部品に塗ったり、ロクセラム・アムマット(防火材)の粉じんでものすごくかゆくなったりの日々。

 

「どういうことかわかります?
入社1、2年目は入ったばかりで仕事もよくわからない。
自分がこれからどうなっていくのか、これからやっていけるのか<先が見えな過ぎるとき>。
<先が見えな過ぎるとき>に社員っていうのは辞めちゃう。

入社10年目っていうのは、仕事もだいぶ出来るようになって、まわりを見回す余裕が出てくるようになってくる。
そうすると、入社20年目や30年目の上司がどんなふうに仕事しているか、どういう給料でどういう待遇か見えちゃう。
ああ、自分がこの先10年、20年仕事を続けるとあんなふうになるんだな、とわかっちゃうわけです。
入社10年目ころの社員っていうのは、<先が見え過ぎるとき>なんですね。
つまり、<先が見えな過ぎるとき>と<先が見え過ぎるとき>に、ひとは現状が嫌になってしまうんですね。

社員に辞められると、会社としては痛手です。
新入社員一人採用するのにどれだけお金をかけているか、10年社員を育てるのにどれだけ手間ひまかけているか。
そうしたコストが全部パーになっちゃうわけですから。

だから工夫して、<先が見えな過ぎるとき>の新入社員には手取り足取り細かく教えて、キャリアの作り方も見せてあげて先の見通しをよくする。
<先が見え過ぎるとき>の10年目くらいには、社内資格試験や小刻みの昇進・昇給を用意して、<先が見え過ぎ>感を減らすわけです。

人事部も大変なんですよ」
そう言って人事部長はグラスにビールをそそいだ。

おかげさまで先日42歳の誕生日を迎えることができた。
<先の見えな過ぎる>10代20代のもがき苦しみでもなく、<先の見え過ぎる>定年間際でもない、40代ならではの仕事と人生の楽しみ方ができるのではないかとわくわくしている。

(FB2015年7月1日分を再掲)