スティーブ・ジョブズの話が道徳の教科書に載ると聞いて、2015年のものを再掲。
「大変です、あなたがいなくなったら会社は回りません。
スティーブ・ジョブズが亡くなったら、アップルでさえ怪しい雲行きですものね」
仕事があるから検査入院できない、とかたくなに拒否する経営者にぼくは言った。
おれはジョブズほどすごくない、尊敬するジョブズと一緒にするなんておこがましい、ジョブズが亡くなってもiPhoneは売れてるじゃないか、なんて反論されたらどうしよう。それからティム・クック、ごめんなさい。
「そりゃあ検査入院中は混乱するかもしれないけれど、一週間くらいなら誰かがその穴を埋めるから大丈夫です。
でもね、うちの病院の場合だって院長が突然倒れたら病院はつぶれてしまいます。
どこかから誰かが代わりの院長を連れてきて、穴を埋めるというわけにはいきません。
トップが突然倒れたら大変っていうのは、病院も会社も同じですよね」
かすかに彼がうなずく。
「トップがいなければ一瞬たりとも回らない仕事というのはあるんでしょうね。
でもね、だからといって無理してあなたが倒れたら社員はどうします?
あなたが検査入院でしばらくいなくてもなんとか仕事は回るけど、無理してあなたが病気でいなくなったら、会社であなたのかわりになる人は誰もいないんじゃないでしょうか。
社員とその家族、取引先にとって、あなたはかけがえのない存在なんです。
検査入院のための1週間を惜しんで、あとで倒れて社員やその家族、取引先を泣かせたら大変だから、そうなる前にきちんと検査入院して徹底的に調べませんか。
ビジネスも健康も、先手必勝、ゴーイング・コンサーンしないとね。
大きくつまづく前に素早く対応して、損失は最小限に抑えましょう」
ぼくがそう言うと、渋々とその経営者は検査入院に同意したのだった。
ヒマな経営者だったらこの手は使えないので、会社云々とたたみかける前にそっとぼくは彼の手の中のスマートフォンを一瞥しておいた。
彼のスマホは部下や取引先からであろう着信でひっきりなしに振動していたし、もちろんスマホはiPhoneだった。
診療中は、スマホの電源切っておくことを強くお勧めする。
*完全フィクションです。念のため。
(FB2015年3月28日を再掲)
↓大きな病気で倒れる前に。